10月31日(火)に2021年から施行される新F1エンジンルールのコンセプトが示された。これは今年からF1新オーナーとなったリバティ・メディアが主導する形でまとめられたものだ。
31日に行われた会議にはF1チーム関係者を始め、現在F1にエンジンを供給しているメルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダのほか今後参戦の可能性があると言われているメーカー数社が顔をそろえていた。
■リバティ・メディア案の骨子は?
リバティ・メディアではこれまで新エンジンに求める要素として、より大きな音を発生し、コストがこれまでよりも削減され、構造がよりシンプルなものにしたいと示唆していた。
そして、31日に示された新エンジン基本コンセプトは現行の1.6リッターV型ターボエンジンを基本的に踏襲するものの、熱エネルギー回生システムであるMGU-Hが廃止され、運動エネルギー回生システムであるMGU-Kの機能をさらに強化拡大することものとなっている。
うわさにのぼっていたツインターボ化は見送られたものの、これまでよりも音量を上げるために最高回転数が引き上げられるとともに、バッテリーなどのコンポーネントや電子コントロールシステムの標準化、エンジン、シャシー、ギアボックスなどに関して「プラグ・アンド・プレイ」的な運用を可能とするための構造標準化といった改善案が盛り込まれている。
■レッドブルはリバティ案を歓迎
現在のF1パワーユニットが非常に複雑なものとなってしまった最大の要素がMGU-Hだと言われているが、これが廃止されれば自動車メーカーや独立系エンジンメーカーなども参入しやすくなるのは事実だろう。
レッドブル首脳の1人であるヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、この案を歓迎すると次のように語った。
「そういうエンジンは、我々にとってはいいものだ」
■フェラーリ、メルセデス、ルノーは反対を表明
しかし、実際のところ、リバティ・メディアと現在F1に参入している自動車メーカーとの思惑には温度差もかなりあるようだ。
ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』は、すでにフェラーリ、メルセデス、ルノーがこのリバティ・メディア案に反対の立場であることを表明したと伝えており、今後何度かにわたって持たれることになる会議を通じて妥協案が検討されることになりそうだ。
メルセデスのモータースポーツ責任者であるトト・ヴォルフは次のように反対の理由を述べている。
「このコンセプトは現在のものに似ているように聞こえる」
「だが、実際にはまったく別の開発が必要となるものであり、そうなると我々は2018年から2020年にかけて2つのエンジンを同時に開発していくことになってしまう」
■本当の検討はこれからだとメルセデス
ヴォルフはさらに、今回提示されたコンセプトはまだ承認されたものでもなんでもなく、今後さらに検討を深めていく必要があると次のように主張した。
「これはレギュレーションというよりはビジョンと言ったほうがよいものだ。そしてそれは彼ら(リバティ・メディア)のビジョンであり、メーカーの意図を反映するものではない」
「2021年にF1がどうあるべきなのかということについてはすべてをひっくるめて定めていくことが重要だよ。単にエンジンの視点からだけではなくてね。今我々が手にしているもの(リバティ・メディア案)は、同意されたものではなく、これから開始される会話の出発点に過ぎないよ」
「特定のことについては正しいが、まだ十分なものではない」
そう語ったヴォルフだが、メルセデスとして必ずしもリバティ・メディアに反旗を翻そうと考えているわけではないと次のように続けた。
「私はただ、違う意見もあるということを明確にしたいだけだ。これはF1のマネジメントから示されたプレゼンテーションなんだ。来週の会議で何が議題に挙げられるのか様子をみて、そこから会話を始めていくことになるよ」