F1最高責任者のチェイス・キャリーが、メキシコで今後F1が進んでいく方向性などについて語った。
2017年のF1は、シーズン前半にはセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がランキングトップに立つなど、過去3年には見られなかったフェラーリ対メルセデスAMGという白熱した戦いが展開されていた。
一時はベッテルとルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)による今季のチャンピオン争いは最終戦まで繰り広げられるだろうと考えている者が多かった。ところが、シーズン後半に入るとフェラーリが失速してしまい、ついに先週末の第18戦メキシコGPでハミルトンのタイトル獲得が決定してしまった。
■ハミルトンは最高のF1アンバサダー
F1の新オーナーとなったアメリカのリバティ・メディアの指名を受けてバーニー・エクレストンの後任としてF1最高経営責任者に就任したキャリーは、メキシコGPの決勝が行われる前にドイツの『Bild am Sonntag(ビルト・アム・ゾンターク)』に対し、通算4回目となるF1チャンピオンの座についたハミルトンについて次のように語った。
「彼はF1が望みうる最高のアンバサダーだ」
「彼はこのスポーツを最善の形で代表しているよ」
■2021年から新たなF1がスタート
今季のF1はあと2レースを残した時点でタイトルのゆくえが決することになってしまったものの、リバティ・メディアはオーナーとして初めて携わったF1初年度に関しては「完全に満足している」とキャリーは語り、次のように付け加えた。
「1か月ごとに進歩していくことも重要だが、もっと大切なのは2020年に向けて何を目指すかということなんだ」
「そこで長期にわたった契約(コンコルド協定)が満了することになるから、我々はそこから新たなF1を始めることができる」
■目指すのはファンに支持されるF1
そう語ったキャリーだが、リバティ・メディアが望んでいることはF1をまったく別のものに変えてしまうことではなく、「チームのよりもファンを重視するF1」に立ちかえらせたいということなのだと次のように主張した。
「エンジンはもっと大音量であるべきだし、もっと安価であまり複雑過ぎないものでなくてはならない。そしてコース上での戦いをもっと増やす必要がある」
伝えられているところによれば、リバティ・メディアは10月中に2021年から導入される新F1エンジンルール案をチームに提示する予定だと言われている。
■特定のチームだけが勝つF1ではならない
だが、F1というものはさまざまな利害関係に支配され、政治的動きも多い世界だ。キャリーもF1にかかわるものすべてを満足させることは難しいということも分かっている。
「ここには強い個性を持った者たちもいるよ」
そう述べたキャリーは、次のように付け加えた。
「だが、最初の1年を終え、私には全員が何かを変える必要があるということを理解しているのが分かるんだ。一番重要なことは、ひとつかふたつのチームだけがすべてを勝ち得ることはできないということだ」
■すべての国でF1を忘れられないイベントに
一方、リバティ・メディアが目に見える形で行っているF1改革のひとつに「ショーアップ」ということがあるのは確かだろう。リバティ・メディアのホームグラウンドとなるアメリカで行われた第17戦アメリカGPではレース前にインディ500のスタイルを模したドライバー紹介などが行われた。
だが、中には今後は実際のレースよりもショー的なイベントの方に重きが置かれていくのではないかと懸念する声もある。
「いや、いや、そんなことはまったくないよ」とキャリーは主張した。
「常にレースが中心に位置することになる。だが、すべての国においてF1レースを忘れられないようなイベントにしていく必要があるんだ」
「レース週末にF3、F2、そしてF1を同時開催することだって考えられる。そうすれば若手ドライバーにももっと注目が集まるし、もっと早い成長をうながすこともできる」
■アジアやアメリカでのレース増加も
リバティ・メディアでは、今後年間のレース数をもっと増やしていくという計画も持っていると伝えられているが、キャリーはマレーシアGPが今年限りで消えてしまうアジア地区において、別のレースを加えるための選択作業を近々開始することになると語り、さらに次のように付け加えた。
「そして、アメリカでもう1レース加えられることになるだろう。マイアミかニューヨーク、あるいはラスベガスでね」