ホンダF1プロジェクト責任者の長谷川祐介が、結果として失敗に終わったマクラーレンとホンダの共同プロジェクトについて語った。
2015年に誕生した新生マクラーレン・ホンダだったが、3年間にわたってホンダはパワーユニットのパフォーマンスと信頼性の両面において満足いくレベルに到達させることができずに終わった。
マクラーレンはついにホンダとの関係を今年限りで解消し、来季はルノーからパワーユニットの供給を受けることを決断した。これにより1988年から1991年まで4年連続でコンストラクターズタイトルを獲得したかつての名門コンストラクターが再び栄光を取り戻す可能性は消えてしまった。
■アロンソからプレッシャーをかけ続けられていたホンダ
マクラーレン・ホンダの共同プロジェクト2年目となった2016年からホンダF1プロジェクト責任者に就任した長谷川祐介は、以後フェルナンド・アロンソから強いプレッシャーを受け続けてきたとスペインの『El Confidencial(コンフィデンシアル)』に次のように語った。
「アロンソは常に私にプレッシャーをかけに来ていました」
「クルマが悪かったときには、彼は何のためらいもなく私に対し自分は満足できていないと告げてきました」
「しかし、彼はいい人ですし、恐らくは私に文句を言うことを申し訳なく感じていたんじゃないかと思います。ですが、彼はそうしなくてはならなかったのです。彼はすべてがうまくいくことを望んでいましたからね」
■アロンソの態度に不満を抱くホンダスタッフもいた
アロンソに関しては、以前から政治的な動きをすることがあるという批判を受けることも多かった。
だが、長谷川はこうしたうわさについて次のように語った。
「いえ、そんなことはまったくありません」
「アロンソが我々を批判したのは、彼が満足できていなかったからですし、彼にはそうする権利があったんです」
「確かに、ホンダにはアロンソの態度を好ましく思わなかった人たちもいます。しかし、私にとっては問題ないことでした」
■悪いのはアロンソにいいエンジンを提供できなかったホンダ
そう語った長谷川は、ホンダがいいエンジンを提供することさえできていれば、アロンソもああした態度に出ることはなかったはずだと次のように続けた。
「私個人としては、彼にいいエンジンを与えることができなかったことを非常に残念に思っています。しかしF1においては、全員を満足させるのは難しいことです」
「彼(アロンソ)が満足できていなかったことにより、いい協働関係を築くのは非常に難しくなっています。しかし、もちろんそれは個人的なものではありません」
「アロンソは自分の仕事をしました。彼は優秀なプロフェッショナルですからね。しかし、ドライバーたちは非常に感情的でもあるんです。ですから彼らがああした態度をとることを理解する必要もあるのです」
「もし彼が最高のクルマを手にしていたら彼も満足できていたはずです。だから、我々の方が文句を言うわけにはいきませんよ」
■ホンダの失敗は野心的過ぎたこと
ともあれ、ホンダは来季からはレッドブルのジュニアチームであるトロロッソにパワーユニットを供給することになる。
長谷川は2018年にトロロッソとの関係をスタートさせるにあたって、これまでのマクラーレン・ホンダとしての活動を振り返りながら次のように語った。
「ホンダではかなり高い期待を抱いていました。それが、我々が犯した大きな失敗だったのです」
「我々は非常に野心的だったのですが、実際のところ2015年にはその準備は整っていなかったのです」
そう述べた長谷川は、次のように付け加えた。
「しかし、ホンダのアイデンティティーは、常に戦い、決してあきらめないというものです。そうでなければ、我々はF1から去っていたでしょう」