今季のF1タイトル獲得に黄信号がともってしまったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)だが、マレーシアGP決勝終了後に発生したクラッシュにより、さらなる打撃を被る可能性がありそうだ。
【動画】フェラーリの不運はレース後まで・・・ベッテル、チェッカー後にクラッシュ/F1マレーシアGP
■悪夢のようなトラブルに見舞われたフェラーリ
セパン・インターナショナル・サーキットで行われた今季のF1第14戦マレーシアGPだが、フリー走行3回目終了間際にそれまで好調な走りを見せていたベッテルのクルマにエンジントラブルが発生。フェラーリではベッテルのエンジンを予選までに交換するという決断を行った。
ところが、ベッテルのトラブルは解消されず、予選Q1をノータイムで終えることとなり、決勝では最後尾グリッドからのスタートとなることが確定してしまった。
また、予選2番手となり、決勝ではベッテルを援護する働きが期待されたキミ・ライコネン(フェラーリ)も決勝スタート前にエンジントラブルが発生。ライコネンは最後の開催となったマレーシアGP決勝を走ることなく終えてしまうことになった。
■ハミルトンとベッテルの差は34ポイントに拡大
ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』は、マレーシアでフェラーリが抱えた問題はターボチャージャーのカーボン製パイプが原因だったようだと伝えている。
最後尾からスタートしたベッテルは、それでも最終的には4位にまで順位をばん回。だが、ポイントリーダーのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が2位でフィニッシュしたことにより、あと5レースを残す段階で両者の差は34ポイントに広がってしまった。
■ベッテル、レース終了直後に痛いクラッシュ
そして、そのベッテルをさらなる悲劇が襲った。
4位でチェッカーフラッグを受けたベッテルがピットロードへクルマを戻すためにクールダウン走行を行っていたとき、ウィリアムズのランス・ストロールとクラッシュするという非常にめずらしいアクシデントが発生してしまったのだ。
そのクラッシュで左リアサスペンションを完全に破壊されてしまったベッテルは、通りかかったパスカル・ウェーレイン(ザウバー)のクルマのサイドポッドに乗ってピットロードまで戻ってくると、「彼(ストロール)は全然見ていなかったんだと思う」と語った。
ストロールはその後ベッテルとフェラーリに謝りにいったとも伝えられているが、レースはすでに終わっていたのに無理に追い抜こうとしたベッテルにも非があると示唆するように『Bild(ビルト)』に次のように語っている。
「レースは終わっていたんだ。だから僕もミラーなんて見ていなかったよ」
■ベッテルに規定外ギアボックス交換の可能性?
このベッテルとストロールのクラッシュに関しては、統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のF1競技委員はどちらのドライバーに対してもペナルティーを科すことはなかった。
だが、このクラッシュがベッテルにとっては非常に痛いものとなる可能性が残されている。左リアサスペンションが完全に破壊され、左リアタイヤがエンジンカウルの上に乗っかってしまうほどのダメージを受けたベッテルのマシンだが、そのダメージがギアボックスにまで及んでいる可能性があるのだ。
現在のルールでは同じギアボックスを少なくとも6レース以上連続使用しなくてはならないと定められており、もしベッテルが鈴鹿で行われる第16戦日本GP(8日決勝)でギアボックスを交換しなくてはならないことになれば、そこで5グリッド降格ペナルティーを受けることになる。
マレーシアGP決勝後にその可能性があるかと質問されたベッテルは次のように答えている。
「分からない。方法を探ってみるよ」
「誰かが僕にクラッシュしてきたわけだから、自分のミスではないからね」
■ベッテルに対する特例措置は?
フェラーリはすでにFIAに対して、もしギアボックス交換が必要となった場合には特例措置を講じて欲しいと願い出たようだと伝えられている。
現在のルールでは、レースをリタイアで終えた場合にはギアボックスを交換しても6連連続使用義務違反に問われないということになっている。フェラーリとしては、チェッカーを受けた後ではあったものの、実際にベッテルは所定の位置までクルマを持ち帰ることができなかったわけであり、事実上クラッシュでレースを終えたに等しいものだったとの主張を行ってものと考えられている。
しかし、FIAでは、仮にベッテルにギアボックス交換が必要となったとしても、特例扱いをすることはできないとの回答をフェラーリに行ったようだとも伝えられている。
■ベッテルが不用意だったとラウダ
だが、メルセデスAMGの非常勤会長を務める元F1ドライバーのニキ・ラウダは、ベッテルがクールダウンラップ中に不用意にストロールを追い抜こうとしたのがまずかったのだと考えている。
「なぜ彼はレースが終わっているのに追い抜こうとしたんだ? そんなことをする理由は何もないよ」
そう語ったラウダは、次のように付け加えた。
「確かに、彼ら2人に非があったかもしれない。だが、それによってセバスチャンは日本でさらに問題を抱えてしまうことになるかもしれないんだ」