セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)は、今季のF1タイトル獲得の望みがシンガポールで消えてしまったとは考えていないようだ。
ポイントリーダーのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)を3ポイント差で追うという状況で迎えた第14戦シンガポールGPだったが、ベッテルは見事にポールポジションを獲得。かたやハミルトンは予選5番手に沈んだことで、ベッテルが再びハミルトンを逆転してランキングトップに返り咲くのは確実かと思われていた。
■風前の灯と化したベッテルのタイトル獲得チャンス
ところが、ベッテルはスタート直後に不用意に2番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をけん制する動きに出る。ところが、そのときすでにチームメートのキミ・ライコネンがフェルスタッペンに並び、追い抜こうとしていたところだった。
行き場を失ったフェルスタッペンとライコネンが接触し、そのはずみでライコネンがベッテルのクルマにクラッシュ。ベッテルはこれにより今季初リタイアを喫することになってしまった。
一方、このチャンスをものにして一気にトップに立ったハミルトンは、そのままレースをコントロールして今季7勝目を達成。ベッテルとの差を一気に28ポイントに開いている。
残り6レースとなった時点での28ポイント差は、ハミルトンが常に優勝を狙えるドライバーだけに、ベッテルにとっては致命的とも言えるギャップであることは間違いないだろう。
■まだ追いつけるはずだとベッテル
だが、ベッテルは母国ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に次のように語った。
「まだ追いつくには十分な数のレースが残っているよ」
「僕は1レース1レースを勝ち続けていくつもりだけど、まだそうできるはずだと強く信じている。後退はしてしまったけれど、これからも戦い続けていくよ」
■外部からの批判は気にしない
最終的には自分も含め4台をリタイアに追い込んでしまったシンガポールでのベッテルのドライビングに対して批判的な意見が多いのは事実だ。フェラーリの地元イタリアのメディアでさえ、ベッテルに対して辛口なコメントを展開している。
だが、ベッテルは「僕はそれには耐えられるよ」と語り、次のように付け加えた。
「外部から意見を言うのは簡単なことなんだ。今回のケースでいえば、わずか5秒のうちに起きたことに対してね」
「基本的に、僕はいつでも最高のスタートを切ろうと心がけているけれど、捨て身でやろうとも思ってはいないよ。その中間だね。順位を上げたり守ったりするチャンスがあれば、それを狙っていくべきなんだ」
シンガポールのスタートで唯一ベッテルの誤算だったのは、チームメートのライコネンがあまりにもいいスタートを決めてフェルスタッペンと並びかけていたことだ。恐らく、ベッテルの左のミラーにはフェルスタッペンのクルマしか映っていなかったのだろう。
■クルマに速さはあるし計画もある
ともあれ、ベッテルとしては気持ちを切り替えて今週末のマレーシアGP(10月1日決勝)に臨むしかない。ベッテルは自分に言い聞かせるように次のように語った。
「僕たちには強いパッケージがあると信じているし、自信に満ちているよ。最近の3レースでは(優勝という)結果は伴わなかったし、リードも失ってしまった。それでもまだ望みはある」
「そう言えるのはクルマが速いからさ。それに、いくつか計画もあるんだ。それがうまくいくかどうかは様子を見るしかないけれどね。でも、僕は自分たちを信じているよ」