メルセデスAMGでは、今季の残り8レースに向けてバルテリ・ボッタスを明確に「ナンバー2」の位置に据えることになるかもしれない。
■タイトル争いから大きく後退したボッタス
F1が夏休みに入った時点では、ランキングトップのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)から33ポイント差、チームメートでランキング2番手のルイス・ハミルトンからも19ポイント差で今季のタイトル争いに加わることも十分に可能な位置につけていたボッタス。
だが、先週末にスパ・フランコルシャンで開催されたF1ベルギーGPでは調子が上がらず、予選では3番手タイムを刻んだものの、決勝では順位を2つ落として5位フィニッシュとなった。
これにより、ベッテルとの差が41ポイントに拡大するとともに、ハミルトンとの差も34ポイントに開いてしまっている。
■まだチャンスはあるとボッタス
ボッタス自身はまだタイトルを狙うチャンスは残されていると考えている。
「まだ8レースも残っているし、多くのポイントを稼ぐことも可能だからね」
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったボッタスは、次のように続けた。
「ルイスやセバスチャンはまだ何のトラブルも抱えていないし、僕も誰かにそういうことが起きることを望んでいるわけじゃない。それは単なる事実さ。でも、何かが起きる可能性は常にあるんだ」
「(タイトル獲得は)僕次第だよ。僕にはポールポジションをとって、ライバルたちを打ち負かす必要があるだけさ」
■ベッテルに対抗するにはハミルトン優先策が必要
しかし、今季メルセデスAMGとドライバーズタイトルを繰り広げているフェラーリは、明らかにベッテル優先策をとっており、現在ランキング5番手となっているチームメートのキミ・ライコネンがベッテルの援護役を務めている。
つまり、これまで自分たちのドライバーには自由に戦わせるという方針を掲げてきたメルセデスAMGにとっても、もはやそういう悠長なことを言ってはいられない状況となっているのは事実だろう。
現在、ランキングトップのベッテルと2番手ハミルトンのポイント差は7ポイントに縮まってきており、仮にモンツァで行われる今週末のF1イタリアGP(9月3日決勝)でハミルトンが優勝すれば、ベッテルが2位となっても同点で並ぶことになる。もちろん、ベッテルが3位以下となれば、ここでハミルトンがランキングトップに躍り出ることになる。
そのためには、すでに大差がついているボッタスがハミルトンの足を引っ張らないことがメルセデスAMGにとって重要となるのは確かだろう。
■今はまだそのときではないとボッタス
メルセデスAMGがハミルトン優先策をとるためのチームオーダーを出すのではないかとの不安はないかと尋ねられたボッタスは次のように答えた。
「それが僕によくない影響を及ぼすのはいやだから、あまりそういうことは考えないようにしているんだ」
「シーズンのある時点からチームが明確に1人のドライバーに集中しなくてはならないのは確かだよ。だけど、僕から見れば、今はまだそうするには少しばかり早すぎると思う」
■モンツァでの結果次第だとヴォルフ
だが、メルセデスAMG首脳部はもうその時期に来ていると考えているようだ。
エグゼクティブディレクターとしてチームを率いるトト・ヴォルフは、次のように語った。
「フェラーリのようなライバルを打ち負かすにはすべてがうまく収まる必要がある」
「可能な限り長く、すべての選択肢に対してオープンであり続けたいと思っているし、こうした問題に対応するためのマニュアルなどないことも分かっている」
「フェラーリの場合は1人のドライバーが明らかにもう1人を上回っているからそういう意味では楽な状態だ。我々はもうしばらくレースごとに判断していくことになるだろう」
「モンツァ以降はどうなるか様子を見よう」
「(モンツァは)我々に合ったサーキットだ。だが、スパ(第12戦ベルギーGP)ではフェラーリが進歩を見せていた」
■すぐに明確なチームオーダーが必要だとラウダ
一方、メルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダの方は、もうハミルトンを明確にナンバー1に据えてボッタスにはその援護に回らせるべきだと考えている。
「ポイントをわざわざ与えるようなことはもう止めるべきだ」
第11戦ハンガリーGP決勝でハミルトンが事前の約束に基づいてボッタスを前に出し、そこでベッテルに余分な3ポイントのリードを与えた件に言及したラウダは次のように続けた。
「私は0.5ポイント差でチャンピオンになったことがある。だから最後に1ポイントがどれほど貴重なものになるかよく知っているんだ」
「私には今我々がなすべきことははっきりと分かっているよ。ボッタスはスパではいい結果を出すことができなかった。そしてタイトル獲得に向けてはルイスの方に大きなチャンスがあることはすでに明らかだ」
現役時代には3度F1王座についた伝説的元F1ドライバーであるラウダは、ドイツのテレビ局『RTL』にそう語ると次のように付け加えた。
「もしブダペストでルイスがあの3ポイントを捨てていなければ、今はベッテルとの差はたった4ポイントになっていたはずだからね」