今シーズン序盤に見せていた勢いを失ってきた感のあるフェラーリだが、地元イタリアのメディアも今後に向けて不安を感じていることを隠していない。
■モナコを最後に優勝から見放されたフェラーリ
第6戦モナコGPでは1-2フィニッシュを決めるなど、それまでメルセデスAMGに対して明らかにリードを保っていたフェラーリだが、第7戦カナダGP以降は1勝もできず、表彰台に上ったのも第9戦オーストリアGPでセバスチャン・ベッテルが2位、前戦第10戦イギリスGPでキミ・ライコネンが3位となっただけとなっている。
イギリスGPでは2台とも終盤にフロントタイヤがパンクするという事態となり、メルセデスAMGに今季2度目の1-2フィニッシュを許し、ドライバーズランキングでは辛うじてベッテルが首位を守ったものの、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とのギャップはわずか1ポイントに縮まってきている。
■今後に悲観的なイタリアメディア
イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』は、イギリスGPを終えて次のように書いている。
「フェラーリの敗北は今季最悪のものだった」
「フェラーリはイギリスGPが恐らくはメルセデスAMG優位となる分岐点だったのではないかとの不安を抱えながら母国へ戻ってきた。最近の3レースは困難なものだった。だが、今後に向けて不安が増大している」
さらに、同じイタリアの『Corriere dello Sport(コリエーレ・デロ・スポルト)』も同意見だ。
「フェラーリはいい状態ではなくなっている」
「メルセデスAMGがトラブルを克服する一方で、フェラーリのパフォーマンスは徐々に弱まってきている。マラネロ(フェラーリ)は再びゼロから出発しなくてはならない」
■フェラーリはイギリスでギャンブルに失敗したとラウダ
メルセデスAMGの非常勤会長を務める伝説的元F1ドライバーのニキ・ラウダは、イギリスGPが開催されたシルバーストンでフェラーリがあまりにもピレリタイヤに依存し過ぎるという戦略的ミスを犯したことでチャンスを逃してしまったのだと考えている。
「彼らは最後まであのタイヤ(ソフトタイヤ)でいこうとしたが、それが失敗だったんだ。それがうまくいかないことは予見できていたことだ」
フィンランドの『Ilta-Sanomat(イルタ・サノマット)』にそう語ったラウダは『Bild(ビルト)』にも次のように語っている。
「これ(イギリスGP)は私に言わせればターニング・ポイントだったよ。我々はとにかく懸命に頑張ってきたからね」
■ストレートでのパフォーマンス差が大きいとベッテル
ベッテルは、最近は予選でメルセデスAMGのペースに付いていけなくなっていることが最大の心配事だと次のように語った。
「彼らはストレートで僕らよりもコンマ3秒から6秒速いんだ。そして僕たちにはそれができていない」
「僕たちもそれに取り組んでいるよ。だけど、一夜のうちに達成できるようなものじゃないんだ」
ドイツのメディアはイギリスGPを失望のうちに終えたベッテルが多くのテレビ局のインタビューを拒否するなど、かなり動揺しているのは確かだと見ている。
■フェラーリ失速の要因は?
イタリアの『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』は、第7戦以降フェラーリが失速してしまったのは、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が燃料にオイルを混入していないかどうかのチェックを厳しくしたことや、最近フェラーリのクルマに設けられていたフレキシブルフロア(走行中に一定の変形を生じるフロア)を禁止したことが大きく響いているようだと考えている。
■まだ安心はできないとメルセデスのボス
ともあれ、F1関係者やメディアの中にはやはり今年もメルセデスAMGがタイトル獲得最有力候補の座に返り咲いたことは間違いないと考えている者が多い。
しかし、メルセデスAMGを率いるトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)は、まだ安心するのは早いと次のように主張した。
「今はみんなそう言っているが、次のレースに臨んだときにそこでショックを受けることもあるものさ」