長年F1トップの座にあったバーニー・エクレストンの後任としてF1最高責任者のポジションについたチェイス・キャリーが、今後開始されるF1チームとの交渉は“大荒れ”のものになるだろうと語った。
■ハネムーンを過ごしているキャリーとF1チーム
F1株式の大多数を取得して新オーナーとなったアメリカのリバティ・メディアにF1の最高経営責任者に指名されたキャリーは、すでにこれまでのエクレストン時代には見られなかったファン対策などを進めており、ここまでのところF1関係者やチームからもおおむね良好な評価を得られているようだ。
メディアの中には、現在は結婚生活をスタートした夫婦になぞらえて、キャリーとF1チームは今はまだハネムーンの時期であり、それなりに甘い関係が成り立っていると表現しているところもある。
■今後キャリーは大きな課題と直面
だが、こと“金”の話になれば状況が違ってくるのはどこの世界でも同じかもしれない。
キャリーが抱える今後に向けた課題のうち、最も大きいものだろうと言われているのは、2020年まで結ばれている「コンコルド協定」が満期を迎えた2021年以降のF1運営をどういう方針で進めていくかということだ。
現在、F1オーナー、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)、そして各チームの3者間で結ばれたコンコルド協定においてそれぞれのチームへのF1収入分配率や額が定められている。だが、現時点での収入分配は必ずしも全チームが同じルールにのっとっているわけではなく、歴史と伝統を持つフェラーリなどは非常に優遇されていることが明らかとなっている。
■2021年以降の処遇問題については交渉難航必至
現在のコンコルド協定は2020年まで有効となっており、2021年以降についてはこれから関係団体や関係者が協議を重ねていくことになっているが、キャリーはこれまでの不公平な収入分配の仕組みを大きく変えたいとの意向を示している。これから各チームとの交渉が始まっていくことになるが、フェラーリやメルセデスAMGなど現在優遇措置の対象となっている大規模チームから大きな抵抗が出てくるのは必至だ。
「みなさんが言うところのハネムーン期間が24時間以上続くのかどうか私には分からないよ」
フランスのモータースポーツ専門誌『Auto Hebdo(オト・エブド)』にそう語ったキャリーは、次のように続けた。
「話し合いは簡単にはいかないと思う。だからこそ、まずはこのスポーツの世界的なビジョンに関して合意しておくことが必要なんだ。もし全員が同じプロジェクトに取り組むならば、話し合いもやりやすくなるだろうからね」
しかし、それは口で言うほど簡単なものではないこともキャリーは十分に承知しているようだ。
「だが、人生は長くて穏やかな川ではない。私は荒波を予想しているよ」とキャリーは付け加えている。