F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、今季中はDRSゾーン(追い抜き支援のための可変リアウイング動作可能区間)を延長するという手段はとらないようだ。
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■スピードアップの反面追い抜きが難しくなったF1
今季はF1マシンに関するレギュレーションが大幅に変更され、昨年までよりも車体がワイド化されるとともに、より大きなダウンフォースが得られるようになっている。さらに、幅広タイヤが装着されたことによりタイヤのグリップも大きく改善され、コーナリングスピードは格段に向上している。
その反面、コース上での追い抜きはこれまでよりも難しくなるだろうと言われていたが、開幕戦のオーストラリアGPでは確かに昨年よりも追い抜きが減ったというデータが示されていた。
これを受け、FIAでは現在各サーキットに設けられているDRSゾーンをこれまでよりも長くする対応策を設けることを検討すると伝えられていた。
■ロシアGPでも追い抜きが激減
そして、第2戦の中国GP、第3戦バーレーンGPではかなり追い抜きも増え、それなりに見応えのあるレースが展開されたものの、先週末にソチで行われたF1ロシアGPではスタート直後にいくつかの順位変動はあったものの、その後はまったくと言っていいほど追い抜きが見られないレースとなってしまった。
ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』は、ミシュランタイヤを使用していたチームがレース出走を事実上キャンセルしたことにより、わずか6台のF1カーで争われることとなった2005年のインディアナポリス(アメリカGP)のときでさえ、今年のロシアGPよりも追い抜きが多く見られたと書いている。
実際のところ、昨年のロシアGPでは29回の追い抜きが見られていただけに、今年追い抜きが困難なものになったことは明らかだ。
■今年のF1カーは確かに追い抜きが難しいとドライバー
「そうだね、追い抜きは難しい。そういうふうに言っておこう」
そう語ったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)は、次のように付け加えた。
「ほかのクルマの後ろにつくとバランスが失われてしまうんだ。クルマは横滑りし、また後退してしまうことになるのさ」
ロシアGPでF1キャリア初優勝を飾ったバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)も次のように語っている。
「今年の新しいクルマを追い抜こうとすると、間違いなくダウンフォースがさらに失われてしまうね」
■FIAはDRSゾーン延長を見送り
今季の追い抜き問題に関しては、少し前に行われたテクニカル・ワーキンググループにおいても議論されたという。だが、ある関係者が語ったところによれば、FIAはそのときワーキンググループのメンバーたちに対し、現状は満足できるレベルにあるとの考えを示したという。
そして、FIAはロシアGPが開催されたソチにおいて、すべてのチームに対し、今シーズンの残りのレースにおいてもDRSゾーンの延長は行わないとの結論に至ったことを通知したと伝えられている。