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【ル・マン24時間&WEC】トヨタ、2017年のル・マン24時間勝利を目指す全面改良型TS050 HYBRIDを発表

2017年03月31日(金)21:28 pm

TOYOTA GAZOO Racingは、2017年のFIA世界耐久選手権(WEC)を戦う、全面改良したTS050 HYBRIDを発表した。

3月31日、北イタリアのモンツァ・サーキットにおいて、2017年を戦う改良型TS050 HYBRIDが、チームの代表者と、今季3台のTS050 HYBRIDをドライブするドライバーによって紹介された。

■ドライバーラインナップ

今季のTOYOTA GAZOO Racingは、マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスの3名が#7号車、セバスチャン・ブエミ、アンソニー・デビッドソン、中嶋一貴の3名が#8号車でWECのフルシーズンを戦い、ステファン・サラザンと、新たに加わる国本雄資、ニコラス・ラピエールの3名が駆る#9号車が第2戦スパ・フランコルシャン6時間と第3戦ル・マン24時間レースに参戦する。

■最大の目標はル・マン24時間

チームの最大の目標は明確であり、2016年にあと一歩というところで逃がしたル・マン24時間レースの勝利だ。そのために、トヨタ東富士研究所とケルンのトヨタモータースポーツGmbH(TMG)の技術陣が一丸となって開発を進め、TS050 HYBRIDのあらゆるコンポーネントに至る全面改良が進められた。

■2017年仕様

2017年仕様のTS050 HYBRIDは改良設計された2.4リッターV6ツインターボ過給ガソリンエンジンに、8MJ対応のハイブリッド・システムを組み合わせる構成。東富士研究所によって開発された新型エンジンは、最適化された燃焼室に伴い、シリンダーブロック、シリンダーヘッドなどの主要部品を全面改良し、圧縮比が高められ、更なる熱効率の向上が図られている。

加えて、ターボチャージャーのサイズ見直しと共にインペラ形状が改良され、応答性と過渡特性の改善によってターボラグは減少。また、インタークーラーは、熱効率の改良により、高温域での性能が向上された。

ハイブリッド・システムもまた全面改良された。モーター/ジェネレーターユニット(MGU)は更に小型化され、改良された高出力型リチウムイオン・バッテリーと共に軽量化にも貢献している。

■ハイブリッド技術は市販車にもフィードバック

こうして進化した高度なハイブリッド技術は、市販車にフィードバックされ、一般のユーザーへ展開されると共に、将来にわたっての「もっといいクルマづくり」に繋げられる。

■改善点とは?

更に、競争力向上を果たすべく、今シーズンのTS050 HYBRIDのシャシーの対しても、トヨタ東富士研究所とTMGの技術陣は、多岐にわたる改善を行った。

今年、変更されたレギュレーションの目的は、安全性向上のための速度抑制にあり、空力効果を制限することで、ル・マンでの数秒のラップタイムダウンを目指している。具体的には車両フロントの空力部品(スプリッター)の高さを15mm上げると共に、リアのディフューザー幅が大幅に狭められた。

■空力の見直し

これに対し、コンピュータによる計算流体力学(CFD)と風洞試験により、TOYOTA GAZOO RacingはTS050 HYBRIDの空力的コンセプトを見直すことで、性能改善するという難題に挑んだ。高くなったフロントノーズと特徴的なサイドポンツーン形状などが主な改良点である。

昨年は1チーム1シーズンあたり3種類の空力パッケージを使用出来たが、今年は2種類に制限された。今回の発表会にTOYOTA GAZOO Racingは、低ダウンフォースパッケージを持ち込んでいる。また、タイヤの使用セット数も削減される。今季は車両毎に4セットプラス2本のスペアタイヤのみで、予選と6時間の決勝レースを戦うこととなる。チームとミシュランとの協力体制により、新しいコンパウンドと構造を持つタイヤでこの新規定に対応すると共に、サスペンションジオメトリの最適化も進めることで、タイヤ摩耗の低減を行う。

その他の規則変更点としては、更なる安全対策があり、サイドミラーの後方視界検査が課された。また、ハイブリッドカーにはパワートレーンの状態を示すインジケーターの装着が義務づけられ、レース中に正常を表す緑のライト以外が点灯した場合、その車両はピットで修理を行わなくてはならない。

■テストで3万km以上を走破

2017年仕様のTS050 HYBRIDは、今季既にポールリカール(フランス)、アラゴン(スペイン)、ポルティマオ(ポルトガル)での合計5回のテストで30,000km以上を走破しており、この中では4回の30時間連続耐久走行テストが行われている。

全面改良された車両と、世界チャンピオン経験者やWECの優勝経験者、そして2人の有望なルーキーという、ドライバーラインナップと共に、TOYOTA GAZOO Racingは勝利を目指して4月16日のイギリス・シルバーストーンでの開幕戦に臨む。もちろん、今シーズンは、いずれのサーキットにおいてもライバルの強豪ポルシェ・チームとの激戦になることは間違いない。

■佐藤俊男 TOYOTA GAZOO Racing代表

「WEC合同テストを迎えるにあたり、チーム全員が士気を上げ、今シーズンへの決意を固めています。勝利を目指す我々の気持ちには疑いの余地がありません。しかし、強豪ポルシェ・チームとの戦いは、今年も厳しいものになると認識しています。

トヨタ東富士研究所とTMGで構成される我々のチームは、オフシーズンの間に全力を尽くしてTS050 HYBRIDの全面改良を行い、初テストから良い手ごたえが確認出来ています。

今シーズン、ル・マンに向けて3台体制で臨むことは、新たな試みであり、我々のル・マン参戦を応援して頂ける皆様方にワクワクする接戦をお届けする絶好の方策でもあると思っています。

昨年の衝撃的な結末で経験したように、ル・マンで勝つことは本当に難しいことですが、これこそが我々の目標です。車両の競争力だけでなくチーム、ドライバー全てが目標に向かって確実に仕事をすることが求められ、皆が全力を尽くした末に必ず結果は見えて来ると信じています」。

■村田久武 レーシングハイブリッド・プロジェクトリーダー

「“TS050 HYBRID”の名称こそ昨年と同じですが、パワートレーンの全面改良とあらゆるコンポーネントの効率向上を行い、今シーズンの車両は大幅な性能向上を遂げました。

TOYOTA GAZOO Racingの最大の目標はル・マン優勝です。

トヨタ東富士の開発スタッフは、昨年のル・マン24時間以来、不眠不休とも言うような頑張りを続け、毎ラップごとでも、レース全体を通してでも先頭争いをする性能を発揮できるパワートレーンの開発を行って来ました。

本日、ここに、改良ターボチャージャーを搭載した2017年仕様の新しいエンジンと新M/G(モーター/ジェネレーター)ユニット、新バッテリーユニットをご紹介いたします。初テストはとても期待が持てる内容でしたが、更にコンポーネントの最良の適合を継続して万全の準備を整えます」。

■パスカル・バセロン テクニカル・ディレクター

「我々のTS050 HYBRIDは今年も全面的なアップデートを果たしました。唯一変更が無かったのはモノコックくらいです。

昨年は、幾つかのレースでTS050 HYBRIDのポテンシャルの高さを示すことが出来ました。しかし、我々の目標は更に高いところにあり、そのために大きな空力諸元の変更、性能と重量の点であらゆるコンポーネントの最適化を図りました。

昨年のル・マン24時間レースで起きた衝撃は、反面、我々にとって、更なる品質管理の意識向上をもたらしました。リスクをゼロにすることは不可能ですが、今年はリスクの低減を目指しました。

オフシーズンテストはまずまずで、パフォーマンスと信頼性の面で満足行く結果を得ていますが、ライバルは強敵であることはよく分かっています」。

■ロブ・ルーペン チーム・ディレクター

「今年はWECにおけるTOYOTA GAZOO Racingにとって、とても重要なシーズンになりますが、チームはその挑戦へ向けた準備が出来ていると思っています。

開発を行ったトヨタ東富士研究所とTMGの技術陣は一丸となってTS050 HYBRIDのあらゆるコンポーネントの改良を図ると共に、第2戦スパと第3戦ル・マンへ向けて3台体制での出場というチャレンジへ向け準備をしてきました。

我々の目標は今年も明確です。上位を争うこと、そして最大の目標であるル・マン24時間レースでの勝利と、WECのタイトル獲得です。それは強豪ライバルチームの存在によりとても高い目標であり、ミスも弱点も無く完璧なレベルで戦わなくてはならないことは分かっています。

我々は2位になるためにレースを戦うのではなく、勝つためにレースに挑んでいます。困難な挑戦ですが、チーム一丸となって戦えば、絶対にチャンスは来るはずです」。

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