アウディは、人工知能をテーマとした世界でもっとも重要な専門家会議「神経情報処理システム(NIPS)」に関する国際会議及びワークショップ(バルセロナで2016年12月5日から10日まで開催)で、アウディが初めて自らの専門的ノウハウを披露することになった。
■クルマ自身がパーキングの方法を学習
アウディは縮尺モデルを使って、クルマ自身がパーキングの方法を学んでいく過程を紹介した。自己学習システムは、自動運転を実現する上でも要となるテクノロジーで、アウディは、機械学習の分野でノウハウを蓄えてきた。
今回、自動車メーカーでは唯一NIPSに参加して発表も行うアウディは、8分の1スケールのモデルカー「Audi Q2ディープラーニング コンセプト」を会場に持ち込んで、人工知能を使った自動パーキングのデモンストレーションを行う。
広さ3×3メートルのスペースのなかで、このモデルカーが、金属フレームで囲まれた適切な駐車スペースを探って発見し、外部の助けなしにパーキング作業を完了するという。
■どんな仕組みなのか?
Audi Q2ディープラーニング コンセプトには、2つの単機能カメラ(ひとつが前方、もうひとつが後方)と、車体を取り巻くように取り付けられた合計10の超音波センサーからなるセンサーシステムが搭載されている。そこからのデータを、車載のセントラルコンピューターが分析して、ステアリングや電気モーターを動かすシグナルに変換する。
移動可能なフィールドのなかで、システムは最初に、駐車スペースと自車の位置関係を把握。位置を把握したら、目的の場所、つまり正しい駐車位置に移動するためにはどうしたらいいか、演算を行って弾き出す。その後、状況に応じて、自動的にステアリングを操作したり、前後に動かしたりして、クルマを移動させていく。
モデルカーが自動的に駐車操作を行えるのは、高度に進化した学習機能のおかげだという。それは、別の言葉でいえば「試行錯誤を通じて学ぶ能力」。システムは最初、クルマが進む方向をランダムに選択。それからアルゴリズムを通じて、とるべきアクションを自動的に発見し、継続的に操作の手順を検討していく。そして最後には、どんなに難しい課題があっても、システムが正しい答えを見いだすという。
■次は実際の自動車で検証する
Audi Q2ディープラーニング コンセプトは、ドイツのガイマースハイムに本拠を置くアウディの子会社、「アウディ エレクトロニクス ヴェンチャー(AEV)」の先行開発プロジェクトとして製作された。次の研究段階では、実際の自動車を使って、駐車スペースを探すプロセスを検証するという。
アウディのグローバルネットワークで結ばれているのは、研究機関だけでなく、この分野を主導するカリフォルニアのシリコンバレーや、ヨーロッパ、イスラエルなどに本拠を置く数々の企業も含まれる。
画像認識の分野で世界をリードするMobileye(モービルアイ)もそうしたパートナー企業のひとつだ。アウディとMobileyeはお互いにノウハウを交換しあいながら、ディープラーニング(深層学習)のテクノロジーを基にした環境認識システムのソフトウェアを、共同で開発している。
アウディはこのソフトウェアを、2017年に発売する新型Audi A8の「セントラル ドライバーアシスタンス コントローラー」(zFAS)において、初採用する予定だ。このzFASを開発する上では、ハードウェアの面でのリーディングカンパニーであるNVIDIAも、重要なパートナーとなった。これらの技術的なソリューションにより、近い将来アウディのユーザーに、『渋滞時の自動運転』や『自動パーキング』といった機能が提供することを目指している。
■人工知能を強化
今後アウディはさらに、人工知能(AI)を用いたコンポーネントの割合を増やしていくなかで、ハイテク産業分野のパートナーとの協力関係を強化していくことになるという。こうした形での人工知能の活用は、都市の交通といった厳しい環境に対応する上で、非常に重要だ。人工知能の技術により、自動運転のクルマも、複雑な周囲の状況を分析して、必要な運転操作を選択できるようになる。
■【動画】アウディ、人工知能で自動パーキングを実演(2:25)