トロロッソのダニール・クビアトが、現在のF1の安全対策はもう十分であり、今後はF1としての面白さをさらに発揮することを追求していくべきだと語った。
【動画】F1界がフェルスタッペンを絶賛、雨で魅了した伝説「セナやシューマッハのようだった」
■ビアンキの事故以来安全対策が強化されたF1
現在のF1の安全性はかなり高いと言われているが、悪天候の中で行われた2014年の日本GP決勝でジュール・ビアンキ(当時マルシャ)が黄旗振動区間でコース外の作業車に激突し、頭部に重傷を負う事故が発生。こん睡状態に陥ったビアンキは、そのまま二度と目覚めることなく2015年7月に世を去った。
この事故をきっかけとして、F1の安全対策がさらに強められ、F1カーにコックピット保護システムの導入が検討されているほか、ウエットコンディションでのレースにおいては以前よりもセーフティカー先導や赤旗によってレースが中断されるケースが増えてきている。
現在のF1ドライバーたちの中にも、こうした安全対策強化の動きを歓迎し、支持する者が多いのは事実だ。
■F1はそもそも危険なものだとラウダ
だが、かつて3度F1王座についた元F1ドライバーであり、現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダは今のF1の安全対策は過剰だと考えている。
「彼ら(F1ドライバー)はレースをし、サーキットで戦うことが求められている。それは我々がやっていた40年前と同じだ」
ラウダは1976年にニュルブルクリンクで開催されたF1第10戦ドイツGPでクラッシュし、炎につつまれたF1カーから救出されたものの大やけどを負ったという経験を持っている。一時は生命すら危ぶまれたラウダだったが、そのわずか1か月半後の第13戦でレース復帰を果たして4位に入賞するという不屈の闘志を示したことで知られている。
そのラウダは、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように続けた。
「あのころは、このスポーツは1,000倍も危険だったよ。だが我々は暗黙のルールを守っていた。私に言わせれば、最高だったのはブラジルでアロンソが次はベッテルにぶつけてやると言ったことだね」
■安全対策優先はもうやめようとクビアト
ロシア出身の22歳のクビアトも、F1はそろそろ安全対策に関してはアクセルを緩めてもいいのではないかと考えているようだ。
クビアトはそれよりも、先週末のF1ブラジルGPで見られたように雨のために何度もセーフティカーが導入されたり赤旗でレースが中断されたりするようなことを減らし、ファンがもっと楽しむことができるF1へと変えていくほうが重要だと主張している。
「F1は安全面に関しては大きな進歩を遂げてきた。僕は、今はすでに適正なレベルに達していると信じているよ」
今週、モスクワで記者たちにそう語ったクビアトは、次のように付け加えた。
「だから、僕はもう(安全対策優先は)やめるべきときに来ていると思うんだ。こういうコンディションでのレースを見るのは誰にとっても魅力的なものだし、僕たちはスピードとエンターテインメントと安全に関してすごく重要なバランスを見つけていくことが必要だと思っているよ」