2016年のF1シーズンを迎えるにあたり、フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネとチーム代表のマウリツィオ・アリバベーネは、序盤から勝利を重ね、メルセデスAMGからF1タイトルを奪い取るという目標を設定していた。
だが、その見込みは大きく外れ、フェラーリはタイトルを取るどころか、いまやコンストラクターズランキング2番手の座もレッドブルに明け渡してしまっている。
■今のフェラーリでは革新も決断もできない
かつてフェラーリに在籍していた元エンジニアのルカ・バルディセッリは、現在フェラーリが抱えている問題は深刻だと『Corriere dello Sport(コリエーレ・デロ・スポルト)』に次のように語った。
「残念ながら、マルキオンネもアリバベーネもレースを行った経験がない」
「今日では、もはや彼ら(フェラーリ)はチームではなく、恐怖を抱えた人々のグループだ。こういう恐怖に支配された環境のもとでは誰も革新的なことなどやれないし、失敗を理由に追い出されることを恐れて何も決断をしなくなるんだ」
■フェラーリは人材面で多くの損失を出してきた
事実、ミハエル・シューマッハのレースエンジニアとして経験を積み、有名なエンジニアであるロス・ブラウンが去ってからはフェラーリのスポーティングディレクターを務めていたバルディセッリも、数年前に現場から若手ドライバー育成責任者というポストに左遷された経験を持っている。
53歳となったバルディセッリは、フェラーリではほかにも多くの重要メンバーをクビにしてきたが、中でもジェームス・アリソン(前テクニカルディレクター)を追い出してしまったのは「大きな損失」だったと語っている。
■ビノットは技術トップよりチーム代表向き
フェラーリがF1カー設計専門家であったアリソンの後任に据えたのは、これまでフェラーリのエンジン開発責任者であったマッティア・ビノットだ。バルディセッリは、この人事について次のように続けた。
「マッティアはメンバーにやる気を持たせる方法を知っているし、素晴らしい経験も持っている。だが、彼はテクニカルディレクターではないよ。彼は自分がクルマの設計をすることができないことも、シャシーに関する深い知識も持っていないことが分かっている。空力的なこともメカニカル的なこともね」
「私としては、彼をチーム代表にしたほうがよかったと思っているよ」
■安定性が得られるまでフェラーリは勝てない
再びフェラーリが勝利を得られるのはいつになると思うかと質問されたバルディセッリは、次のように答えている。
「彼らが安定し効率のよい組織づくりを達成でき、優れた発想とミスを犯さないドライバーを擁したときだろうね」
現在はミハエル・シューマッハの息子ミックのアドバイザー的役割を担っているバルディセッリは、フェラーリの現在のドライバーについても次のように語っている。
「ライコネンは2015年よりはいいね。だが、ベッテルはかなりひどい。彼は昨年有頂天になり過ぎていたよ。だが、問題は彼らにあるのではない」
バルディセッリは、問題は現在のチーム首脳陣にあるのだと次のように付け加えた。
「金はあるだろう。だが、勝つのに必要なのは安定性だ。チームにいる者たちをあせらせてはならないよ。マルキオンネはすぐに勝利したいと望んでいるのだと思うが、F1ではそううまくはいかないんだよ」