2015年にマクラーレンと組んでパワーユニットサプライヤーとしてF1復帰を果たしたホンダだが、2年目の進展状況には一定の満足感はあるものの、まだ決して喜べる状況ではないと考えている。
■満足感はあるも目標にはまだ遠い
2015年には想像以上の苦戦を強いられ、マクラーレン・ホンダはF1コンストラクターズランキングでも10チーム中9位に沈んでしまい、下には唯一ノーポイントで終わったマノー・マルシャだけという厳しい結果を突き付けられていた。
だが、2016年シーズンにはホンダ製パワーユニットもパフォーマンスと信頼性の両面で堅実な進歩を遂げ、現時点ではランキングも11チーム中6番手にまで浮上してきている。
ホンダにとってのホームレースとなる鈴鹿でのF1日本GPは残念な結果に終わってしまったが、今季ここまでを振り返れば喜べる結果になっているのではないかと質問されたホンダF1プロジェクト責任者の長谷川祐介はフランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』に次のように答えた。
「すごく喜べるとまでは言えませんね。それより、満足はしていると言ったほうがいいでしょう」
「多くのことを達成してきましたが、まだ目標とするところからはかけはなれています。エンジンの改良度合いはまずまずでしたが、まだ十分ではありません」
■最初はプレッシャーも大きかった
昨年ホンダのF1プロジェクトを率いていた新井康久からバトンを渡された長谷川だが、2015年が悲惨とも言える結果だっただけに、かなりのプレッシャーを感じていたのは間違いない。
「我々のところにプレッシャーの強さを図る道具はありませんが、間違いなくすごく大きかったですね」
「最初は雰囲気もピリピリした感じでした。ですが、改善が見られたおかげで、今ではかなりよくなってきています。いくつかの勇気づけられる結果も得られましたし、今ではそうした緊張感がさらなる士気につながっていると感じています。それが大きな違いを生んでいるのです」
■今後の課題は内燃エンジンの改善
長谷川はさらに、ホンダが2016年に大きく前進したのはエネルギー回生のエリアだったと次のように続けた。
「そのシステムはライバルたちのレベルに到達していますし、見方によってはライバルたちをもしのいでいます。しかし、内燃エンジンに関してはまだ劣っています」
■トークン撤廃が躍進のチャンスになるとは限らない
今年までは、シーズン中にはパワーユニットのパフォーマンス開発が大きく制限されており、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が発行するトークン数の範囲でしか開発を行うことができなかった。
しかし、2017年にはこのルールが撤廃されることになっており、シーズン中に自由にパフォーマンス改善開発を行うことができるようになる。
長谷川もこれによって少し気が楽になると認めたものの、それだけでホンダが躍進できると決まったわけではないと次のように続けた。
「来年はこのトークン制度がなくなりますが、だからと言って問題がなくなるわけではありません。技術的制限は残りますからね」
だが、長谷川は、最終的にはすべてのF1エンジンサプライヤーが平等の条件のもとでパフォーマンスを競い合うことになると考えている。
「平等ということに関しては、いつかは自然にそうなる時が来ると信じていますし、人為的にそれを制限するというような結果になってはならないと思っています」
■残り4レースはすべてQ3進出とポイント獲得を目指す
最後に、長谷川は今季の残り4レースに臨む上での心構えを次のように語った。
「エンジンの効率性についてはもっと向上が期待できます」
「残りのレースでは2台のクルマがいずれも予選の最終段階に進み、ポイントを稼がなくてはなりません。そうすれば、我々もいい気分で冬休みに向かうことができますからね」
そう述べた長谷川は、次のように締めくくっている。
「私としてはそれ以上のことを必要としていますが、あまりに高すぎる目標を設定しても意味がありません。2017年に向けた準備を行う上で、いい基盤となるようなシーズンの終わり方をしなくてはならないと思っています」