今シーズンの前半戦最後のレースとなるF1ドイツGP(第12戦)が開催された先週末のホッケンハイムだが、そのパドックでは2017年からの導入が見送られることになったコックピット保護システム「ハロー」に関する激論が続いていた。
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■ドライバーは全員ハロー導入を求めているとGPDA会長
F1ドライバーによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の会長を務める元F1ドライバーのアレックス・ブルツは、F1チームによる投票によって同システムの導入が2018年に先送りされたことに不満を表明。ハローの導入に関しては全ドライバーが即時導入を求める書類に署名していたと主張している。
■ドライバーの中には否定派も
だが、ドライバーの中にはそれは事実ではないと言う者もいる。例えばフォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルグはドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、「僕は何も署名などしていないよ」と語った。
さらにレッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも、「我々のドライバーたちはどちらも(署名は)しなかった」と主張している。
■2017年の導入はまだ消えたわけではない?
そんな中、F1最高責任者のバーニー・エクレストンが、ハロー導入先送り決定に怒りを示したドライバーたちをなだめに動き、スパ・フランコルシャン(ベルギー)とモンツァ(イタリア)でのテスト結果次第では、ハローを2017年から導入するという計画が復活するかもしれないと示唆したようだとのうわさもささやかれていた。
■このタイミングで朝令暮改はありえない。もっとテストが必要
だが、以前からハロー導入に否定的な立場をとっていたことで知られるヒュルケンベルグは次のように主張した。
「9月にまたすべてを変えてしまうことなどできないよ。エンジニアたちは今ハローがないという前提で2017年型車の設計に全力を投じているんだからね」
「まだどうなるか分からないことがあまりにも多すぎるし、もっとテストを重ねていくほうがいいよ」
メルセデスの非常勤会長を務める元F1ドライバーのニキ・ラウダも同意見だ。
「すべてのドライバーにテストさせて、彼らがどう言うか様子を見ようじゃないか。特定のサーキットにおける特定のコーナーでどういう視認性の問題が発生するかまったく分からないんだからね」
■FIAの説得材料は不十分?
一方、当初はハロー導入に反対の立場をとっていた現F1チャンピオンのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だが、ハロー導入を進めるFIA(F1を統括する国際自動車連盟)が最近プレゼンテーションを実施し、同システムを装着することで死亡事故の発生確率が確実に下がると主張したことで、現在はハローを導入したほうがよいと考えを改めたと伝えられている。
だが、マルコはそのFIAのプレゼンテーションでは「どういった事故のシナリオなのかということさえ言及されていなかった」と語り、来季からの導入を決定するための情報としては不十分なものだったと主張している。