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「行き過ぎた安全対策」には疑問だとF1の重鎮たち

2016年07月07日(木)18:20 pm

3度F1王座に輝いた伝説的元F1ドライバーであるニキ・ラウダと、レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、F1では安全性追求と“F1のDNA”を守ることのバランスを取ることが必要だと主張している。

■より速いF1に戻るのはいいこと

現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるラウダだが、ここ数年人気低下現象が指摘されていたF1が再び世界最高峰のモータースポーツとして注目を集めるようになってきていると考えている。

「今、我々は正しい道筋に戻ってきたところだ」

母国オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』にそう語ったラウダは、次のように続けた。

「だが、人々が再び本当にそう信じられるようになるためには、もう少し時間がかかるだろう」

■安全対策はもっと慎重に進めるべき

そう語ったラウダだが、F1の安全対策が次のステップに進もうとしていることに関しては、もっと“慎重”であるべきだと考えている。

「このばかげたハローシステムがそのひとつの例だよ。私から見ればまだその開発は終わったわけではない」

F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が2017年からF1カーに設置を義務付ける方向で動いているコックピット保護装置に言及したラウダは、次のように続けた。

「我々はFIAに意味のあることだけを決めるようにさせなくてはならない」

「私に言わせれば、こうした安全装置を増えたことですべてが変わってきていると思う。今日のドライバーたちはもはや、ヘルムート(レッドブルの現モータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコ)や私が成功するために冒してきたリスクを負うことはなくなっている」

■リスクを背負うのもF1のあるべき姿

1976年にニュルブルクリンクで行われたドイツGPでクラッシュし、炎上するマシンの中で大やけどを負ったラウダだが、不屈の闘志でカムバックを果たし、翌年には自身2度目のF1タイトルを獲得したことでも知られている。そうした悲惨な事故を乗り越えてきたラウダは、次のように続けた。

「危険が非常に多かったにもかかわらず、我々はみんなひとりきりだった。ドライブすることの喜びと、悲惨な事故が起きることに対する恐れに支配されていたよ」

「もちろん、事故が少なくなったのはいいことだ。だが、今では非常に異なるドライバー世代となっており、本当に個性的な者はほとんどいない」

■行き過ぎた安全対策は魅力を失う原因に

レッドブルのマルコもまた、1972年のフランスGP決勝で前のクルマが跳ね上げた小石が目を直撃。失明こそ免れたものの、レーサーを続けるために必要な視力を失って引退を余儀なくされたという経験を持っている。

そのマルコも、ラウダ同様、今では最高峰のスポーツであるべきF1が、少し毒気が抜かれたものに変わってしまっていると次のように語った。

「スキーヤーのほうが今ではレーシングドライバーよりもかなり危険な状態のもとでやっている」

「だが、危険というものもずっとモータースポーツの魅力の一部だったんだ」

そう述べたマルコは、次のように結んだ。

「このスポーツもかなり安全なものとなったし、それは正しいことだ。だが、それも行き過ぎてしまえば、人々を引きつけていた魅力だってうせてしまう。すべての危険を取り除くことなどできないよ」

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