レッドブルが2戦連続でやってしまったピットストップ戦略ミス。その被害者のダニエル・リカルドは毎晩悪夢を見ているかもしれない。いつも満面に笑みを浮かべるリカルドからは、すっかり笑顔が消えてしまった。
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■スーパーソフトをガレージ裏まで取りに行くメリットはあったのか?
リカルドがピットインしたとき、いつも通りにタイヤがそこにあれば、何の問題もなくトップでコース復帰できていたのは間違いない。
しかしピットにはあるはずのタイヤがなかった・・・。
タイヤコンパウンドを「黄色から赤へ変更」するという決定の連絡は30秒前だったという。しかし、その赤いスーパーソフトタイヤはガレージ裏まで取りに行かなければならなかった。
もし、ガレージ裏の赤いスーパーソフトタイヤを取りに行かず、すでにガレージ内に用意されていた黄色いソフトタイヤを履いて難なくピットアウトしていたとしたら・・・例えひとつ硬いタイヤだとしても、リカルドはコース上で順位を楽に守り抜けたのではないだろうか・・・。
■【データ分析】リカルドのロスタイムは10秒
レース後、FIAが発表した全ピットストップタイムを見てみると、リカルドが失ったタイムはおよそ「10秒」だった。リカルドが23周目に深溝のフルウェット(青)から浅溝のインターミディエイト(緑)へ替えた際のピットストップでのロスタイムは25.054秒。そしてインターミディエイト(緑)からスーパーソフトタイヤ(赤)へ替えた問題の32周目は35.327秒だ。10秒はペナルティにも相当するほど、あまりにも大きなミスと言える。
■【データ分析】スーパーソフトにこだわるメリットはなかった?
ピレリがレース後に発表したピットストップチャートを見てみると、優勝のハミルトンは31周目にウルトラソフトタイヤ(紫)へ、2位リカルドは32周目にスーパーソフトタイヤ(赤)へ、3位セルジオ・ペレス(フォース・インディア)は30周目にソフトタイヤ(黄色)へ履き替えている。それぞれ3種類の異なるコンパウンドを選んだのだ。
結果的に、ほとんどのクルマがその後一度もピットインすることなく「48周〜46周も」走りきることになった。
つまり路面温度が低すぎて、どのタイヤでも十分に発熱しなかったため減らず、最後まで保ってしまったのだろう。
■コンパウンド間の差は小さかった
そして、驚くのはそのタイム差。コンパウンド間の差がそれほどなかったのだ。レース中は周回遅れなどがあるためラップタイムにバラツキは出る。しかし、ラップ毎のタイム差を見ると、レッドブルは赤いスーパーソフトにこだわらず、黄色いソフトタイヤのままで行ったとしても、それほどタイムに影響はなかったのではと推測できる。
実際、スーパーソフト(赤)のベストタイムはリカルドが出した1:18.294。そしてソフトタイヤ(黄)のベストタイム1:18.005を出したのはフェラーリのセバスチャン・ベッテルで、柔らかいはずのスーパーソフトよりも速いタイムで走ったのだ。ちなみにソフトタイヤ(黄)で2番目に速いタイムは3位ペレスの1:18.446で、やはりスーパーソフト(赤)のリカルドのタイムと大きく離れているわけではない。
■ソフトタイヤ(黄)が正解だった
タイヤ別のタイム結果だけを見ると、最初からピット内に用意されていたソフトタイヤ(黄)に交換していたとしても、それほどコース上でのタイムロスはなかったと考えられる。それどころか速かったかもしれない。ピットで10秒ものタイムを失ってしまうリスクよりは、そのままソフトタイヤを選択しておいた方が正解だっただろう。
もちろん、リカルドが燃費走行していたことも考えられるが、トップ奪還を狙う中でずっと燃費走行だったはずもない。それに燃費走行の可能性は全員に言えることだ。
そのままソフトタイヤなら・・・リカルドは悪夢にうなされることになりそうだ。
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