先週末のF1スペインGP決勝で、同士打ちによって2台がリタイアするという悲惨な結果に終わったメルセデスAMGだが、その事故の原因については相反する見方があるようだ。
●【比較動画】ハミルトンとロズベルグの車載カメラにはエンジンマップの違いがハッキリ映っていた
【動画】メルセデスAMG、1周目に2台でクラッシュする映像/F1スペインGP決勝レース
■ハミルトンに非があったとニキ・ラウダ
メルセデスAMGの非常勤会長であり、現役時代には3度F1王者となった伝説的元F1ドライバーであるニキ・ラウダは、今回のアクシデントに関しては、コース脇の芝の上に乗ってしまってコントロールを失い、ランキングトップのニコ・ロズベルグを巻き込んでしまったルイス・ハミルトンにすべての責任があると断じていた。
だが、開幕5連勝と昨シーズンからの通算8連勝という記録達成を逃したロズベルグは当然ながら納得できていない。
「ニキ・ラウダが彼(ルイス・ハミルトン)を責めたところで何の慰めにもならないよ」
そう語ったロズベルグは、「勝利を逃し、25ポイントを失ってしまったんだからね」と付け加えた。
■もう終わったことだとラウダ
だが、ラウダはすでにこの件はもう過ぎたこととして忘れるべきだと考えている。
「ルイスは我々に、責任は自分にあると目で伝えていた」
「彼は陳謝した。彼はすべて自分の責任だと認めたんだ。私はもうそれで問題ないよ」
オーストリアのテレビ局『ORF』にそう語ったラウダは、次のように続けた。
「トト(ヴォルフ/エグゼクティブディレクター)は違う見方をしている。だが、私は黒か白かで物事を考えるほうなんだ。もし誰かがミスを犯しても、それは自分のせいだと認め、『みんな、本当に申し訳ない』と言えば、私にとってはもう過ぎたことになるのさ」
■設定ミスを犯していたロズベルグ
ラウダにとっては、そういう単純な話で済むことかもしれない。だが、ヴォルフは、ここで考えなくてはならない重要な要素としてロズベルグが「誤ったエンジン設定」でバルセロナのターン3を抜けようとしていたことだと主張している。
「彼(ロズベルグ)がルイスよりも明らかに遅かったのはそれが理由だったんだ」
ドイツの『Bild(ビルト)』にそう語ったヴォルフは、次のように付け加えた。
「突然ああいうことが起きてしまったのはそのためなんだ。彼らはどちらも瞬時に判断しなくてはならなかったからね」
■レーシング・インシデントだったとブルツ
F1ドライバーによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の会長を務める元F1ドライバーのアレックス・ブルツは、そうした理由により、ハミルトンだけに責任があったと責めるのは間違いだと考えている。
「ジャッキー・スチュワート(元F1チャンピオン)やニキ・ラウダがルイスの責任だと言ったのは知っている。恐らく彼らは、彼(ハミルトン)が攻めようとしてあまりにも攻撃的過ぎたと考えたんだろう」
「私も2人合わせれば6回もF1チャンピオンになったこの2人(スチュワートとラウダ)のことは尊敬しているよ」
「しかし、やはりF1チャンピオンとなったジャック・ビルヌーブは、逆にあれはニコのミスだったと考えている。ルイスに対してあまりにもきつくドアを閉め過ぎたからだ。それがあまりにも難しいことだったのは明らかだからね」
「だが私は、あれはレース中の事故に過ぎなかったと考えているし、レース競技委員たちも調査の結果そういう結論を出したんだ」
『Times(タイムズ)』にそう語ったブルツは、次のように結んだ。
「彼ら(ハミルトンとロズベルグ)は、どちらもあのときに間違った判断をしていたのさ」