前戦F1ロシアGPの後で、レッドブルはダニール・クビアトをジュニアチームのトロロッソに降格し、代わりにマックス・フェルスタッペンをトロロッソからレッドブルに昇格させるという異例のドライバー人事を行った。これに対しては批判的な声も決して少なくはなかった。
■ドライバー交代が成功したレッドブル
しかし先週末のF1スペインGP決勝では、4番グリッドからスタートしたフェルスタッペンが、メルセデスAMG勢の同士打ちにも助けられ、移籍後最初のレースでレッドブルに勝利をもたらすという大活躍を見せた。
レッドブルのドライバー育成責任者を務めるヘルムート・マルコは、母国オーストリアのテレビ局『ORF』に次のように語った。
「彼(フェルスタッペン)がやってのけたことは信じられないよ。ライコネン(フェラーリ)のようなドライバーから追われながらも、あれほどうまくリードを守り切ったのは素晴らしかった」
マルコとしては、自分たちが行ったドライバー人事が正しいものだったと証明できたと考えていることだろう。
■レッドブルのやり方には賛成できないとイタリア人記者
しかし、それでもレッドブルのドライバー人事のやり方について違和感を抱いている者もいる。
イタリアの『La Repubblica(レプブリカ)』のマルコ・メンスーラ記者は、今回のフェルスタッペンの優勝を受けて次のように書いている。
「18歳で、こういうサーキットで、ライコネンのようなドライバーから50周にわたって攻められながらも優勝を飾るということは、誰にもできるようなことではない」
「彼(フェルスタッペン)と、その才能を見抜いていた者にお祝いを述べたいと思う」
「とは言え、このドライバー(フェルスタッペン)に対する山ほどの称賛があるにせよ、私は自分がこれまで言ってきたことを繰り返したいと思う。私は、レッドブルは今回のドライバー変更をこういう形で行わないほうがよかったと思っている」
そう書いたメンスーラ記者は、次のように付け加えた。
「10代のドライバーに賭けることはいい宣伝にはなるだろう。だが、スポーツという観点から見れば、1人のフェルスタッペンを輩出するためには50人の(ハイメ)アルグエルスアリが必要になるだろう。あえて言うが、それは大虐殺だ」
レッドブルの育成ドライバーであったスペイン人ドライバーのアルグエルスアリは、2009年にトロロッソから19歳でF1デビュー。アルグエルスアリはフェルスタッペンに抜かれるまで最年少F1デビュー記録を持っていた。
2010年と2011年にもトロロッソに在籍し、若手としては十分とも言える活躍を見せたアルグエルスアリだったが、レッドブルはその年のクリスマス時期に翌年からダニエル・リカルド(レッドブル)とジャン-エリック・ベルニュ(現フェラーリ/テストドライバー)をトロロッソのドライバーとして起用することを発表。当時のチームメートであったセバスチャン・ブエミとともにF1での進路を絶たれてしまった。
アルグエルスアリは、その後2014年からフォーミュラEに参戦していたが、2015年にモータースポーツから引退している。