スイス出身の元F1ドライバーであるマルク・スレールは、2016年シーズンのF1は過去2年とは少し状況が変わってくるかもしれないと考えている。
現在はテレビ解説者を務めるスレールは、今年はメルセデスAMGの強さが影をひそめることになるかもしれないと見ているのだ。
■今年のタイヤルールはフェラーリに有利
2月下旬から3月上旬にかけてスペインのバルセロナで合計8日間にわたって行われたシーズン前テストでは、フェラーリが好調なタイムを刻んでみせていた。一方、メルセデスAMGは多くの周回数こそこなしたものの、タイム的にはそれほど目立つものではなかった。
これに関しては、メルセデスAMGがまだ手の内を見せていないだけで、実際にシーズンが開幕すれば、今年もまたその圧倒的な強さを示すに違いないはずだと考えている者が多い。
だが、スレールは、実際にはそうではなかったのかもしれないと考えているようだ。
ドイツの『T-Online.de』に、メルセデスAMGが2016年もシーズンを支配することになると思うかと尋ねられたスレールは、「そうでないことを期待しているよ」と答え、次のように続けた。
「メルセデスAMGの独走態勢が終わりを告げそうな兆候もある。まず、フェラーリがさらに差を縮めてきている。次に、今年はタイヤが重要な役割を演じるかもしれないが、それは間違いなくフェラーリにとって有利なはずだ」
「フェラーリは常にタイヤの温度を適正なところまで上げられないという問題を抱えていた。だが、今年は彼らも軟らかめのコンパウンドによって補うことができるからね」
■メルセデスAMGのシーズン前テストプログラムにも疑問
スレールはさらに、シーズン前テストで手の内を見せないようにしていたと考えられているメルセデスAMGのやり方にも疑問を感じているようだ。例えば、メルセデスAMGでは今年から新たに供給されるピレリのもっとも軟らかいウルトラソフトタイヤもまったく試すことなくテストを終えていた。
「彼らがどうしてそんなことをしたのか理解できないよ。それが裏目に出る可能性もあると思うね」
そう語ったスレールは、次のように付け加えた。
「過去にも何度となく、特定のタイヤコンパウンドに苦しめられるチームを見てきたからね」
■メルセデスパワーユニットは900馬力ほどか
だが、今年もメルセデスAMGの圧勝を確信している者も少なくない。うわさでは、過去2年の間ライバルたちに付け入るすきを与えなかったメルセデスAMGが、その最強パワーユニットをさらに改善したようだ言われており、もはや1,000馬力ほどのパワーを発揮できるのではないかと考えられているためだ。
だが、こうしたうわさに関しても、スレールは首をかしげてみせた。
「それはちょっと大げさだと思うよ。ターボから最大限に絞り出せても700馬力がいいところだ。それにエネルギー回生によって160馬力を上乗せしてとしても、860馬力ほどだ」
「だが、グレーゾーンと呼ばれる領域もあるし、メルセデスはとりわけその部分に強みを持っている。私は、彼らが900馬力ほどに達しているのではないかと考えている」
そう語ったスレールは、次のように付け加えた。
「だが、私はフェラーリも同じくらいのレベルに達しているのではないかと期待しているがね」