2015年に2年連続で通算3度目のF1王座についたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が、2017年からF1カーの重量がさらに増すことに対し、懸念を表明している。
F1では2017年から現行ルールを大きく変更しようと動いている。今週行われたF1委員会では、そのための最終期限を今年4月末まで延期することを決めたものの、F1カーの車幅やタイヤ幅をこれまでよりも拡大することや、新たにドライバーの頭部保護のための装置をコックピットに導入するという案が採択されたと伝えられている。
■現在の改革案では不十分だとホーナー
だが、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、自分はその案には反対票を投じたと次のように語った。
「我々を含め、2、3チームがそのシャシーレギュレーションには反対したよ。なぜなら、私はそれではまだ十分ではないと考えているからだ」
だが、ホーナーも、何もしないよりは何らかの変更を加えるほうが好ましいことに変わりはないと主張している。
「最悪なのは、何も変わらないことだ。しかし、今回のレギュレーション変更も完全に理解されてのものではないとすれば、それは非常に残念なことだがね」
■ルールの詳細に関する詰めはこれから
事実、ウィリアムズの最高技術責任者であるパット・シモンズも、5月まで待たなければ詳細なルールがどうなるかはまだ分からないだろうと警鐘を鳴らしている。
「チームやピレリ(F1タイヤサプライヤー)の間に意見の不一致が見られた。だが、今では共通認識が持てていることに全員が満足していると思う。ルールに関してはまだ具体化できていないがね」
そう述べたシモンズは、次のように付け加えた。
「(決定の)遅れは、メルセデスAMGやフェラーリのようなチームより小規模チームへの打撃のほうが大きいよ」
■車両重量増加を懸念するハミルトン
一方、ハミルトンは別の視点から新しいレギュレーションに対して批判的な意見を述べている。それは、F1カーが2017年には今よりもさらに重くなってしまうということだ。伝えられるところによれば、2017年からは現行の702kgから722kgへと一気に20kgも車両重量が増えてしまうという。
その理由のひとつは、「ハロー方式」と呼ばれるドライバーの頭部保護装置だけで10kgに達すると考えられているためだ。
この頭部保護装置の導入に関しては、F1関係者の中にも賛否両論あるのも事実だ。
あるエンジニアは、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、「それはトラクターにはいいだろうけれど、F1カー向きじゃないね」と語っている。
だが、2009年のF1ハンガリーGP予選において、前方を走るクルマから脱落した部品の直撃を受けて大けがを負った経験を持つフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)は、何らかのドライバーの頭部保護対策が講じられるべきだと次のように主張した。
「見た目のいい解決策が望ましいと思うけれど、何よりも重要なのは何かを導入することだよ」
■車重を減らせばタイムは縮まる
しかし、ハミルトンは、それらによってF1カーの重量が増加することは非常に好ましくないと考えている。
「僕がF1に来たときは、クルマは600kgだったんだ。そして今ではそれから100kgも重くなっている」
今年最初のF1公式シーズン前テストが行われているバルセロナでそう語ったハミルトンは、次のように続けた。
「実際のところ、3秒速く走るためには、レギュレーションなんてそれほど大きく変える必要ないんだよ。クルマを軽くすればいいだけのことなんだ」
「今のクルマは超が付くほど重いんだ。それをさらに重くしようなんて、ばかげた話さ」
■燃料制限も不要だとクルサード
かつてマクラーレンやレッドブルで活躍した元F1ドライバーであり、現在はF1中継にかかわる仕事をしているデビッド・クルサードも同様の意見の持ち主だ。
クルサードは自身のツイッターに、F1が現在の燃料流量ルールを撤廃することでスピードアップを図ることになるかもしれないといううわさが真実であることを期待していると次のように書いている。
「燃料の最大使用量制限をなくし、ドライバーに100%の力を発揮できるようにすれば素晴らしいだろうね」
さらに、クルサードは次のように付け加えた。
「私に言わせれば、F1はレーシングテクノロジーの最高峰に位置するものだ。だが、同時に最速であるべきなんだ。ところが、クルマは毎年のように重くなり、遅くなってしまっている」