F1では、2017年あるいは2018年からさらに大パワーのエンジンを投入するなどし、F1カーの速度を高める計画を進めようとしている。
だが、メルセデスとルノーの技術責任者がエンジンに関してはあくまでも現行パワーユニットをベースにするべきだと主張している。彼らによれば、まったく新たなエンジンを開発しなくてはならなくなれば、さらにコストの上昇を招くことになるだろうという。
■エンジンルール改善案を検討するF1エンジンサプライヤー
F1最高責任者のバーニー・エクレストンやF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長が進めてようとしていた独立系エンジンメーカーによる自然吸気エンジンと現行パワーユニットを並行使用するという案はF1委員会によって否決された。
その代わり、F1エンジンメーカーたちは2017年か2018年から、大パワーと大音量を発生し、なおかつ安価なエンジンとするための対策を講じることになっている。
■コストを抑えるには現行エンジンの使用継続が望ましい
だが、メルセデスAMGのマネジングディレクターとしてエンジン開発に携わるアンディ・コーウェルは次のように語った。
「金を節約しようとするなら、(現行の)1.6リッターターボをベースとする必要がある。どんなにシンプルなコンセプトにするにせよ、新たなエンジンを設計することになれば金をむさぼるように使うことになる」
ライバルメーカーであるルノーのF1エンジン責任者レミ・タファンも同意見だ。
「もっとも金をかけないで済むのは、現在の(エンジン)様式を可能な限り残すことだ」
■パワーアップにはさらにコストがかかる
そう語ったタファンは、現在のパワーユニットでも1,000馬力のパワーを発生させることは可能だと次のように続けた。
「単純構造のエンジンで1,000馬力を発生するのは無理だ。単純に既製品を買えば済むという問題ではないんだ」
「仮に燃料流量を増やし、最大回転数を上げれば、(現在のエンジンでも)1,000馬力は達成できるだろう」
だが、コーウェルは、燃料流量を増加させるのはそれほど簡単な話ではないと次のように主張している。
「すべてがさらに高温になるから、冷却効率を高めることと信頼性を強化することが必要になる。そして、そのためにはコストがかかるんだ」
■違うルールにすればさらに差が広がる恐れも
コーウェルはさらに、F1において接近戦が演じられることを望むのであれば、ここで再びまったく新しいエンジンレギュレーションを導入するよりも現行エンジンを継続使用するほうがよいのは確かだと考えている。
「もし、現行レギュレーションを継続していけば、2018年までには(各メーカーのエンジンの)差は恐らくコンマ3秒ほどに縮まるだろう」
そう語ったコーウェルは、次のように付け加えた。
「新しいコンセプトを導入すれば、誰かがうまいアイデアを考え出すというリスクを抱えることになる。そうすればコンマ何秒どころか、数秒の差が生じる可能性だってあるんだ」