F1最高責任者のバーニー・エクレストンが、2017年から現行のパワーユニットと並行して異なる規格のF1エンジンを走らせるという案はまだ消えたわけではないと主張した。
エクレストンとF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長は、2017年から独立系エンジンメーカーが製造する“クライアントエンジン”と呼ばれる低コストの自然吸気エンジンを導入する計画を進めようとしていた。
だが、この案は11月下旬に行われたF1委員会で否決されてしまった。
だが、その後、今月2日(水)に行われた世界モータースポーツ評議会において、エクレストンとトッドに対し、F1を改善するための策を2016年1月末日までに起案し提出するよう「委任」が行われている。
■最大の問題は圧倒的に強いメルセデス
エクレストンは、ドイツの『Die Welt(ディー・ヴェルト)』に対し、今日のF1における最大の問題は、メルセデスAMGが強過ぎることだと次のように語った。
「基本的に、それは目新しいものではない。かつてフェラーリがそうだったときもある。だが、実際にはあのときと現在とは状況が違うんだ」
「現在のメルセデスAMGの強さはあまりにも圧倒的過ぎて、ほかの者にはチャンスさえない」
「フェラーリのときはそういう印象ではなかったし、存在感だって違っていた。メルセデスAMGが何か間違いをしでかしたと言っているわけではないよ。だが、今の状況はこのスポーツにとってはかんばしいことではない。F1を退屈なものにしてしまっている」
「彼らの強さは圧倒的過ぎて、多くの人たちがレースのスタートを見て、その後はテレビのスイッチを切ってしまうんだ」
■大きな負担なく購入できるパワフルなエンジンが必要
エクレストンは、自分とトッドが今とは違うルールを設定し、新たな独立系メーカーの参入を図ろうとしたのは、それによってもっと激しい「戦い」が見られるようにするというのがその理由だったと次のように続けた。
「私が言う独立系とは、大手自動車メーカーに属さないメーカーという意味だ。だが、我々は彼ら(大手自動車メーカー)をF1から追い出したいなどと考えているわけではない。それはまったく逆だ。我々はただ、チームがもっと安く購入できる力強いエンジンを望んでいるだけだ」
F1委員会では、エクレストンやトッドが示した案は廃案とされたものの、メルセデスやフェラーリといった自動車会社たちは、その代わりに2018年に向けて別の解決策を探るということを確約している。
エクレストンはさらに次のように続けた。
「性能がよく、コスト効率の高いエンジンをすべてのチームが購入可能とするためのアイデアであれば、自動車会社も含め、誰もが提案を行うことができる」
「基本的に、2018年からの新しいエンジンに関する協議は今まさに本格化している」
■2018年からは現在とは違うエンジンになるはず
そう語ったエクレストンは、そうした協議が「満足できる」だけの対策を導くことができなければ、FIAはまた元の案を再び持ち出すことになるだろうと次のように続けた。
「チームや自動車メーカーが(新たな)レギュレーションを好ましく思わないのであれば、彼らにはそれに対して行動に移す権利がある。F1を辞めてしまうこともできるだろうし、FIAに抗議することもできる。どんなことでもできるよ」
「我々はF1がだめになっていくのを見過ごすわけにはいかない。そして、私はそうするつもりはないよ」
「将来的には異なるエンジンが導入されるのは確かだ。もっと馬力があり、もっと安価のエンジンがね。それは間違いないよ」
■複雑過ぎるエンジンは不要
エクレストンはさらに、現在のパワーユニットは、テクノロジー優先となっており、それがショーとしての面白みを奪っていることだと次のように続けた。
「我々はエンターテインメントビジネスに携わっているんだ。ほかのどんなスポーツもそうだが、我々は観客や視聴者に大きく依存している。そして、私はほとんどの観客はエンジンに興味があってF1を見にきているのではないと確信しているよ」
「誰もこの高度なテクノロジーが施された複雑なエンジンについてよく分かっていないんだ。パドックにいる多くの者さえ理解できていないのに、どうしてファンに理解を求めることができると言うんだい? みんなが見たいのは、いろんなドライバーが勝つ可能性のあるワクワクする楽しいレースなんだ」
「それこそ、我々が提供すべきものだ。ほかには何もない」
そう語ったエクレストンは、次のように締めくくった。
「我々は(自動車メーカーを)操作したいとか、そういうことを言っているわけではない。だが、我々全員が自分たちの仕事を正しく行うことが必要だと言っているだけだ。そうすればF1が生き延びることもできるだろう」