23年ぶりに復活したマクラーレン・ホンダの2015年シーズンは、予想以上の大苦戦を強いられてしまった。最初から優勝争いにからんでくると考えるのは難しいだろうとは考えられていたが、最終的にランキング9位という結果しか残せなかったことには驚いた者も少なくなかったようだ。
だが、それ以上の驚きだったと言われているのが、情熱的なラテン系であり、よくも悪くも感情の起伏が激しいフェルナンド・アロンソが辛抱強く耐え忍んでいることだ。
■昨年のほうがもっと不満だった
自身3度目のF1タイトル獲得を目指し、昨年まで5年間在籍したフェラーリを離れてマクラーレン・ホンダに移籍してきたアロンソは、次のように語った。
「昨年のほうがもっと不満を感じていたよ。(フェラーリでは)誰もが他人のせいにし、自分はいい仕事をしたのだと証明することにやっきになっていた。そしてこのプロジェクト(マクラーレン・ホンダ)と出会ったことで僕自身が進歩できたし、以前よりもいい人間になれたんだ」
事実、昨年まではチームに対する不満や不信を公然と口にすることも多かったアロンソだが、今年は慎重に言葉を選び、あからさまなチーム批判やマネジメント批判はほとんど行っていない。
■鈴鹿でホンダに喝を入れたのはよかった
だが、そのアロンソもホンダのホームグラウンドである鈴鹿で行われた第14戦日本GPではかなり感情的になっていたのも事実だ。ほかのクルマに追い抜かされてばかりのアロンソは、ホンダエンジンは“GP2エンジンだ”と無線で叫び、それがテレビを通じて全世界に紹介されてしまっていた。
だが、アロンソはそのことについて次のように語った。
「日本でああいうことを言ったのはいいことだったよ。なぜなら、僕たちは自分たちが抱えている問題と、それを改善するためには何をすべきかが分かっているからね。だけど、僕たち全員がそれにかかわることが必要だし、もっと予算や人材を投入することも必要なんだ」
■僕は帽子を投げつけたりしない
さらに、今年はアロンソが落ち着いていて驚いたという声があることに対してどう思うかと質問されたアロンソは、次のように答えている。
「僕は、それはいつものことだと思うよ。僕には、いつでも何か問題を抱えているし、怒っているというイメージがあるみたいだね」
「(そういう認識があることについて)僕は驚いていると言うべきだろうね。僕はこれまで何度も最終戦でF1タイトルを取り逃がしたことがあった。時にはすごくドラマチックな形でね。例えば2010年のアブダビや2012年のブラジルがそうだった。だけど、僕は常に自分にできる限りのことをしているし、いい態度を取り続けるように努め、チームとの関係も保っていた」
「今ではメルセデスAMGが常に表彰台に上っているけれど、お互いに帽子を投げ合っているよ。口もきかずにね。でもそのことについては誰も何も言わないんだ」
第16戦アメリカGPで優勝し、2015年のF1タイトルを獲得したメルセデスAMGのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが表彰台を待つ控室で行った小競り合いに言及してそう語ったアロンソは、次のように付け加えた。
「だけど僕は、たとえ10位だろうが2位だろうが、あるいはトップだろうが、前向きな姿勢でチームとともに仕事をし、良識ある態度を取っている。そして、そのことが驚かれてしまうんだ」