レッドブルでは、来シーズンに搭載するエンジンを求めて瀬戸際での努力を続けている。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、F1最高責任者のバーニー・エクレストンと統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が進めようとしている2.2リッターツインターボエンジンの導入に興味を抱いていることを認め、オーストリアの『Kleine Zeitung(クライネ・ツァイトゥング)』紙に次のように語った。
「もし通常のエンジンを入手できなければ、何かほかのものが必要になるからね」
■最終リミットはあと2、3週間
だが、もしエクレストンの計画が順調に進んだとしても、その2.2リッターV6エンジンがお目見えするのは2017年からとなる。そして、ホーナーは2016年にレッドブルが1年参戦を見合わせるという計画はしていないと主張している。
だが、時間が刻々と過ぎていく中、レッドブルのエンジンがまだどこのメーカーのものとなるか分からない状況では来季型車RB12の設計を完成させるわけにもいかない。
レッドブル総帥であるディートリッヒ・マテシッツが「今後2、3週間のうちにこの問題に決着をつける必要がある」と語ったと伝えられているが、「この時点で、来年の最初のテストに出られるかどうかギリギリのところまできている」とホーナーも認めている。
こうした状況を受け、レッドブルでは、どのエンジンになったとしても対応できるようにするための準備を行うしかない状況となっている。
■4種類のシャシー設計を並行
ホーナーは、F1公式サイトのインタビューで次のように語り、現在はメルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダのいずれのエンジンにも対応できるよう準備を進めていることを明らかにしている。
「4つのバージョンのクルマを設計しているよ。だから、いずれかのエンジンがうまく合うはずだ」
レッドブルでは、ここまでその4メーカーすべてと交渉を行ってきており、すでに契約の中途解除を通達したルノーと関係を修復する可能性すら否定していない。
「だから、音楽が鳴りやむまで待って、そのときどのイスが空いているかを確かめることになるよ。あるいはもうイスは残されていないかもしれないがね」とホーナーは続けている。
■ルノーからノーブランドでエンジン購入も?
ホーナーが使った「何かほかのもの」という表現は、必ずしもエクレストンらが進めようとしている独立系メーカーのエンジンだけを意味するものではないと考えている関係者もいる。
最近のうわさでは、レッドブルがルノーからエンジンを買い受け、ルノーというブランド名を使わずにそのエンジンを使用するという計画を進めているようだとも言われている。
2016年に向けて、ルノーとの契約破棄を白紙に戻し、再びよりを戻すという選択肢が最もシンプルな選択肢になるのではないかと質問されたホーナーは、次のように答えた。
「現時点ではどんな可能性であれ無視はできないよ。だが、その場合にはこれまでとは違った関係になるだろうね」
■残されるホンダエンジン使用の可能性
レッドブルにとってもうひとつの望みは、ホンダからエンジン供給を受けることだ。
ホンダではレッドブルへのエンジン供給に前向きだと言われているが、それに対して拒否権を持つマクラーレン総帥のロン・デニスがかたくなにそれを拒んでいると伝えられている。だが、エクレストンやジャン・トッドFIA会長らの尽力により、デニスを説得する可能性も残されていないわけではない。
レッドブルへのエンジン供給の可能性について『Speedweek(スピードウィーク)』から質問を受けたホンダF1プロジェクト総責任者の新井康久は、次のように答えた。
「これまで、私たちは常にオープンな姿勢だと言ってきています。そして現在も交渉が行われています」
「こうした質問に耳を傾け、それに回答を行うことが私の責任です。しかし、どういう状況となろうとも、マクラーレンが私たちにとって公式なファクトリーチームであることに変わりはありません」と新井は付け加えている。
いずれにせよ、レッドブルがF1にとどまることができるのか、あるいは撤退してしまうのか、その答えはあと数週間のうちには出ることになるようだ。