WEC(世界耐久選手権)の責任者であるジェラール・ヌブーが、F1が当初の2016年カレンダーを修正し、初開催のF1アゼルバイジャンGPと有名なル・マン24時間レースの日程がバッティングするスケジュールを組んだのは、明らかに「意図的な攻撃」だと主張した。
■ヒュルケンベルグの2016年のル・マン参戦が不可能に
このほど、F1の2016年暫定カレンダーに修正が加えられた。これは、年間21レースが盛り込まれたことで、夏休みが短縮されたことに対する不満への対応として行われたものだと言われている。
だが、この修正によってアゼルバイジャンとル・マン24時間レースの日程が重なったことで、今年F1とのかけもちでポルシェから初参戦し、見事に初優勝を飾るというセンセーションを巻き起こしたニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)の来年のル・マン24時間参戦が不可能となってしまった。
F1とWECの両シリーズを統括するFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長は、この件に関してフランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』に対し、「ル・マンに関してはできる限りの保護を行っている。だが、我々としてはほかの分野に対してもその収益や置かれている立場などに対して敬意を払わなくてはならない」と語り、日程のバッティングは不可避だったと弁明していた。
■日程のバッティングは意図的なもの?
ヌブーは、今回のF1カレンダー変更に関しては、F1最高責任者であるバーニー・エクレストンが、いまやF1をしのぐほどの人気を獲得しようとしているル・マンにF1ドライバーを出走させないためにわざと日程が重なるように仕向けたのだと考えている。
事実、2013年までレッドブルで活躍し、現在はポルシェからWECへ参戦している元F1ドライバーのマーク・ウェバーは、2016年にル・マン24時間への参戦を考えていたF1ドライバーはヒュルケンベルグだけではなかったと次のように語った。
「何人かの本当に優れた(F1)ドライバーたちが不満を抱えているのは知っているよ。彼らは(F1では)戦えるクルマに乗ることができていないからね。そして、彼らはここ(WEC)でのチャンスをうかがっているんだ」
■エクレストンとFIAを批判するWEC責任者
ヌブーは、「これは明らかに我々とこのレースに対する攻撃だよ」と語り、次のように続けた。
「エクレストンはこういうことを無頓着に行うような人物ではないからね。モータースポーツファンにとって、ヒュルケンベルグやほかのF1ドライバーたちのチャンスが失われたのは残念なことだ」
ヌブーはさらに、FIA会長であるトッドについても次のように批判を行った。
「FIAはもっと我々を保護すべきだったよ」
かつてフェラーリのチーム代表を務め、ミハエル・シューマッハとともに黄金時代を築いたトッドだが、FIA会長となってからはあまり強いリーダーシップを発揮することがなく、それに対しての批判も少なくない。