F1の統括団体FIA(国際自動車連盟)は、カスタマーエンジンの費用に上限を設けることを目指している。
新たなV6パワーユニットに変わって以降、カスタマーチームはメーカーに対して年間1700万~2200万ユーロ(約23億~30億円)支払っていると見られており、これが小規模チームの経済状況を圧迫している。
ザウバーのチーム代表モニシャ・カルテンボーンによると、2013年までのV8エンジン時代は、年間およそ1400万ユーロ(約19億円)にまで下がりつつあったという。
「さらに下がることを望んでいたのですが、間違った方向に進んでしまいました」とカルテンボーンは語る。
■費用の上限をルールに組み込むべきだった
この問題について、FIA会長のジャン・トッドは6月末に次のように語っていた。
「確かに、あまりにも高額だ」
「この問題については、カスタマーの負担に上限を設けなかった責任を私が負うべきだろう」
「これから取り組んでいく。たとえ遅くともないよりはまし、と言うじゃないか」
■抵抗するメルセデスとフェラーリ
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によると、FIAはカスタマーチームの負担額に上限を設け、年間1200万ユーロ(約16億円)程度に抑える策を検討しているという。
だが、エンジンメーカーはこれに抵抗する構えだ。
メルセデスAMGのチーム代表トト・ヴォルフは、「FIAの要請は真しに受け止める」としながらも、次のように話す。
「現在の費用は、当初のビジネスモデルに従って計算されている」
「それを下げるとなれば、また鉛筆を削って検討し直す必要が出てくるだろう」
フェラーリのチーム代表マウリツィオ・アリバベーネも、「われわれが負担している費用より低い金額にすることはできない」と話している。
■あくまでメーカーの「宣伝活動」
ウィリアムズの元最高技術責任者で共同オーナーのパトリック・ヘッドは、カスタマーエンジンの費用がこれほど高いのは、メーカーが新エンジンの開発費用を取り戻そうとしているからだと話したと伝えられている。
カルテンボーンも、次のように厳しく指摘する。
「われわれが今のエンジンを求めたことは1度もありません。求めたのは自動車メーカーであり、われわれに押し付けたのです。そうすれば、開発費用をわれわれに負担させることができますから」
「これはわれわれではなく、彼らのイメージアップのための宣伝活動なのです」