2015年F1で勝利を欲しいままにするメルセデスAMG。チームCEOのトト・ヴォルフは、F1を「ショー」と捉えると、好ましい状況ではないと考えている。
F1第8戦オーストリアGPは、またしてもシルバーアローが余裕の1-2フィニッシュを飾った。世界的にF1テレビ視聴率が低下するなか、視聴者から退屈なレースと思われても仕方ない。
■レッドブルのイラ立ち
ルノー・エンジンに手を焼くレッドブルは、決勝のチェッカーフラッグが振られるずっと以前からこうした事態を想定。パドック内で発行されるF1情報誌『The Red Bulletin』決勝日号の表紙で、面白おかしく「ルイス・ハミルトン、2015年、16年、17年、18年、おまけに19年の世界タイトル獲得も」と今後を予想している。
「全世界独占:未来のF1ここにあり」などと、大胆な見出しだ。
チーム状況にも規則にも不満のレッドブルは、明らかにフェラーリと交渉している。将来、単なるエンジン「カスタマー」になっても構わないらしい。
「いずれ彼らは復活する」と21日(日)、報道陣に語ったのはフェラーリ社長のセルジオ・マルキオンネ。「もしわれわれに彼らの手助けができるなら、喜んでそうしよう」
■ホンダの長期戦略は
昨年始まった「パワーユニット」新時代でひどいスランプを経験しているのはルノーばかりではない。ホンダも相当に苦戦している。
2015年F1は早くも中盤戦に突入するなか、ホンダとマクラーレンのコラボは大外れの様相を呈する。本田技研の新社長、八郷隆弘氏はF1にどのような長期的展望を抱いているのだろうか。
21日(日)のコース上には八郷氏の姿もあったが、プロジェクトは予定通り進行中だとF1責任者の新井康久が述べるに留まった。
この日、新井はオーストリアで報道陣に次のように語った。「彼ら、つまりCEO(最高経営責任者)も重役たちも、勝つには時間が必要で、さらにプロジェクトは長期に及ぶと考えています」
F1を俯瞰(ふかん)してみると、新規則に適応している自動車メーカーはメルセデス・ベンツとフェラーリのみだ。なかでもメルセデスAMGは、明らかに先頭を走っている。
規則変更の必要性については、パドックでいろいろなうわさが立っている。例えば、せめて「トークン」のシステムを廃止しようとか、ルノーとホンダに戦う機会を与えようといった具合だ。
■常勝メルセデスAMGはF1にとってプラスか
そこへヴォルフの、メルセデスAMGがやすやすと優勝を重ねる姿はショーとして芳しくないといった発言である。
「スペクタクルの観点から、一チームが長期間に渡って勝ち続けるのは確かに興ざめだ」とイギリス『City A.M.』紙上でF1経済記者のクリスチャン・シルトに語ったヴォルフ。
「われわれは2000年代のはじめ、6年もフェラーリが勝つところを見せつけられた」「レッドブルは立て続けに4年、勝った。われわれは今、2年目だ。これはショーとしてよくない。明らかにね」
レッドブル社主のディートリッヒ・マテシッツは、彼所有のレッドブルとトロロッソ、2つのチームを撤収する構えを見せている。F1はこれを軽々しく捉えるべきでないとヴォルフは警告する。
「大所高所からF1を見るべきだ」とヴォルフ。
「『勝っているのだから、別にいいじゃないか』。それはわれわれの姿勢ではない。1チームが定期的に、半ば当たり前のように勝つ姿は健全か?いいや、恐らく違う」
「この状況を打開するには、関係者が一堂に会してどうするか決めるしかない」