レッドブルとトロロッソのオーナーであるレッドブル総帥のディートリッヒ・マテシッツが、フェラーリエンジンへの転向のうわさを否定した。
17日(水)に、ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』が、レッドブルが主要ライバルであるフェラーリとの間でエンジン供給に関する交渉を行っていると報じていた。
だが、F1第8戦オーストリアGP(21日決勝)が行われるレッドブルリンクにおいて、サーキットオーナーでもあるマテシッツは18日(木)に「そんなうわさに意味などないよ」と語った。
今回のうわさが広まった背景には、マテシッツの右腕と称されるヘルムート・マルコもからんでいる。レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるマルコは、『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に対し、「フェラーリのBバージョンのほうがルノーのAバージョンよりもましなはずだ」と語っていた。
だが、マテシッツは、現在のエンジンサプライヤーであるルノーとの間には2016年までの契約が結ばれており、「ルノーに代わるメーカーはない」と主張。
2017年からはどうなるのかと質問されたマテシッツは、『Speedweek(スピードウィーク)』に対し次のように答えた。
「これから2、3年のうちにF1がどうなるかなんて分からないし、今だって何が起きているのかよく分からないほどだ。F1のことに関しては予想めいたことは言わないほうがいいね」
■カスタマーエンジンでは勝てない
だがマテシッツは、ルノーからワークスエンジンの供給を受けられるという現在の立場を捨てて、単なる顧客としてフェラーリからエンジンを購入することが正解だとは思えないと次のように続けた。
「直接的なライバルから、十分にポイントを稼ぐことができるだけのエンジンを手に入れることはできるかもしれない。だが、エンジンの供給元であるチームを打ち負かせるほどのエンジンは決して得られないだろう」
マルコの表現を借りるならば、フェラーリのBバージョンはルノーのAバージョンよりましだとしても、それでは決してフェラーリのAバージョンには太刀打ちできないということだ。
「カスタマーエンジンでは、今後再びF1タイトルを手にすることはできないだろうね。現在は空力面も制限されているし、もし我々にはもうチャンスはないと分かったときには、単に(F1に対する)興味を失ってしまうことになるだろう」
それまでは、ルノーでは現在の非力なV6ターボによるパワーユニットが改善されるよう期待するしかないとマテシッツは次のように付け加えた。
「まだ望みは抱いているよ。最後まで希望は捨てない」
■エンジンの自社製造は常識に反する
いずれにせよ、レッドブルが現在置かれている状況に満足することは決してないということだ。
一方、レッドブルがエンジンを自社製造する計画をしているのではないかとのうわさもささやかれているが、マテシッツは次のように語り、それを否定している。
「我々はエンジンメーカーではないんだ。もちろん、満足のいく供給先を見つけることができなければ、いつか自分たちでエンジンを作ることがあるかもしれない。だが、それは常識に反するものだよ」
「つまり、森で蹄鉄(ていてつ)を見つけたからといって、それを馬に変えられるわけではないということさ」とマテシッツは付け加えた。