ウィリアムズのパット・シモンズ(チーフテクニカルオフィサー)が、F1エンジンメーカーからエンジンを購入している「カスタマーチーム」がレースに勝つことはできないとの意見に対し、反論を展開した。
昨年までメルセデスからエンジンの供給を受けていたマクラーレンだが、今季から7年ぶりにエンジンサプライヤーとしてF1に復帰したホンダからワークスエンジンの供給を受けるという決断をしていた。マクラーレン総帥のロン・デニスは、これまでずっとF1で成功するためにはエンジンメーカーとワークスエンジンの供給契約を結ぶか、あるいは独自にエンジンの製造まで行うしかないという持論を展開してきている。
■本当にワークスエンジンでないと勝てない?
ウィリアムズでは、2014年にそれまでのルノーからメルセデスにエンジンを変更。それ以来、ウィリアムズは最強と称されるメルセデスエンジンの供給を受けるチームの中では最も高い競争力を示すチームとなっている。
だが、強いとは言え、昨年から今季ここまでにかけてウィリアムズではまだ優勝を果たすことはできていない。シモンズも、今シーズンもワークスエンジンを搭載するメルセデスAMGやフェラーリが一歩先を行っていることは間違いないと認めている。
「我々が(レースに)勝てる位置にいるかって? いや、そうではない」とシモンズは最近語っていた。
だが、シモンズは、エンジンを購入するカスタマーチームがレースに優勝するのは不可能だとするデニスの意見に対しては次のように反論した。
「私は、エンジンを購入するチームにはチャンスがないとは思っていない」
■そういうコメントにはウラがある
かつてルノーF1でタイトルを獲得した経験を持つ一方で、常に最下位争いをしていたマルシャで仕事をした経験も持つベテランエンジニアのシモンズは、『UOL Esporte(ウニヴェルソ・オンライン・エスポルチ)』にそう語ると、次のように続けた。
「ロン・デニスがそういうことを言ったがために、誰もが同じようなことを言い始めている。だが、私のような立場にある者がみなさんのような人たち(ジャーナリスト)に話をするときには、ある理由のためにそうするんだ」
「それは自分たちを慰めるためではなく、自分たちのチームに対して何かを明らかにしたいという思いや、自分たちの意見を言いたいという思いによるものなんだ」
「そして、私はロンも自分の視点を明確にしたい、あるいは、なぜホンダと組むことにしたのかという理由を説明したいという気持ちからそう言っているんだと思う。これが勝つための唯一の手段なんだとスポンサーたちを納得させるためにね」
■カスタマーチームがタイトルを取った実績も
だが、シモンズは、デニスの主張には無理があると次のように続けた。
「彼は2009年のことを忘れてしまったようだね。あの年はマクラーレンがメルセデスの主要チームだったにもかかわらず、カスタマーチームに過ぎなかったブラウンGPに負けてしまったじゃないか。そういうことは起こりうるんだ。なぜ我々に同じことができないと言うんだい?」
シモンズは、ウィリアムズがメルセデスと結んでいる契約では、ワークスチームであるメルセデスAMGと平等の技術提供を受けられることが保障されていると主張。さらに、メルセデスがウィリアムズに対して提供しているサービスは素晴らしいものだと次のように続けた。
「彼ら(メルセデス)は常に我々と一緒に働いているよ。レース週末の間もそうだし、パフォーマンス会議や、必要に応じて開催されるテレビ会議などでもそうだ」
「彼らはウィリアムズのために働くという契約を結んでいる。だから彼らにとっても、メルセデスAMGだけが勝つのではなく、ウィリアムズ-メルセデスも同じように勝つことができるほうが利益になるんだよ」とシモンズは付け加えた。