2人の元F1ドライバーが、F1モナコGP(第6戦)でメルセデスAMGがルイス・ハミルトンのピット作戦を誤ってしまったことで、今後両者の関係に亀裂が生じることになるのではないかと指摘している。
モナコGP決勝終盤にセーフティカーが導入されたとき、メルセデスAMGはハミルトンにピットインを指示。これによってほぼ手中に収めていた勝利が、ハミルトンの手からこぼれ落ち、チームメートのニコ・ロズベルグのほうに転がってしまっていた。
その後、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、ハミルトンに陳謝するとともに、これによってハミルトンとチームの関係が悪化するようなことはないと次のように語った。
「信頼が我々のチームにおける重要な価値基準になっている。ひとつのレースでそれが失われてしまうようなことはない」
■ひとたび疑いが生じると修復は困難
だが、これに関して、疑問の目を向ける者もいる。その1人はかつてマクラーレンやレッドブルで活躍してきた元F1ドライバーのデビッド・クルサードだ。
「この次にメルセデスAMGが無線でルイス・ハミルトンにピットに入るよう指示を出したとき、彼がそれに対してこれまでよりも不安を感じるだろうことは十分に予想できる」
現在はイギリスのテレビ局でF1解説者を務めるクルサードは、次のように続けた。
「こうしたことに対応していくのは非常に難しいだろう。チームから出される指示に必ずしも従う義務はない。だが、すべての指示に対してドライバーが疑問を感じ始めると、F1での基本的な機能が損なわれ始めるんだ」
さらに、スイス出身の元F1ドライバーであり、現在はドイツのテレビ局『Sky(スカイ)』で解説者を務めるマルク・スレールも、ハミルトンとメルセデスAMGの間にはすでに関係悪化の兆候が見られると指摘している。
■ハミルトンにも責任はある
実際のところ、あのピット戦略ミスにつながった最初のきっかけは、ハミルトンがすでにかなり使い込んで温度も下がったタイヤで走り続けることに疑問を呈したことだった。
それゆえ、スレールはあの失敗の責任の一端はハミルトンにもあると『Sky(スカイ)』に語っている。
さらにスレールは続けた。
「これまで何度も彼らの無線連絡を聞いているが、ルイスはしばしばチームから出される指示を疑っていた」
「だから、彼らにとってこの問題は以前よりもさらに大きなものとなると思うんだ」
■大きいロス・ブラウンの不在
スレールは、現在のメルセデスAMGには2013年までチーム代表を務めていたロス・ブラウンのような、信頼のおける指示を出せる人材がいないと次のように続けた。
「そういうケースでは、ロス・ブラウンは常にコンピューターよりも自分の直感のほうをあてにするのが上手だった」
スレールは、ブラウンがチーム戦略を担当していたときには「ハミルトンも決してチームからの指示を疑うようなことはなかった」と指摘し、「今では不信感が募り始めているよ」と付け加えている。