レッドブルのダニール・クビアトにとっては、今週末のF1スペインGP(10日決勝)でスタートするヨーロッパラウンドが正念場となりそうだ。
2014年に彗星(すいせい)のごとくレッドブルのジュニアチームであるトロロッソから19歳でデビューを飾ったクビアト。自信に満ちた走りを示した若者は、4度F1王座に輝いたセバスチャン・ベッテルのチーム離脱が決定したことを受け、わずか1年でトップチームであるレッドブルのドライバーに抜てきされていた。
■ここまでいいところのないクビアト
だが、今シーズン序盤のクビアトには昨年のような切れ味が見られない。ルノーエンジンの信頼性やパフォーマンス不足といった問題があるとはいえ、ここまでの4レースで予選Q3に進出できたのはわずかに一度だけ。決勝では2回9位入賞を果たしたとはいえ、レッドブルのドライバーとして期待に沿えているとは言えない状態だ。
かたや、同様にルノーエンジンのトラブルに泣かされることが多いとはいえ、今季トロロッソからデビューした17歳のマックス・フェルスタッペンは果敢な追い抜きを見せるなど評価もうなぎ上りだ。すでにちまたではクビアトが今季限りでレッドブルのシートを失い、その後任にフェルスタッペンが昇格するだろうといううわさまでささやかれている。
だが、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、ここまでのクビアトの不調について、その責任はレッドブルとルノーが負うべきものだとし、昨年はベッテルを上回る活躍を見せたダニール・クビアトも同様に苦戦を強いられていると強調している。
「ダニエル・リカルドは、これまでどおりほほ笑みを絶やさずに頑張っている。そして若いクビアトも、現在のクルマでは本来の力を示すことができていない」とホーナー。
だが、リカルドがここまでの4レースで19ポイントを獲得しているのに対し、開幕戦ではルノーエンジンのトラブルでグリッドにもつくことができず、第3戦中国GPでもリタイアに終わったクビアトはまだ4ポイントしか獲得できていないのも事実だ。
■まだ結論を出すには早すぎるとウェバー
しかし、2013年までレッドブルに所属していたマーク・ウェバーも、まだ21歳になったばかりのクビアトを見限るには早すぎると考えているようだ。
ウェバーは、『Sport360(スポーツ360)』に対し、2014年にメルセデスAMG以外で唯一3勝を飾ったリカルドについて、「まぐれで何レースも勝つことはできないよ。彼が非常にいい才能を持っていることは明らかだ」と語ると、クビアトについても次のように続けた。
「ダニールに関しては、時がたてば分かるだろう。今シーズンが終わるまで1レースごとにどれほど向上できるか様子を見ないとね。彼ら(レッドブル)も来年は復活すると思うよ」
■巻き返しなるか? レッドブルとクビアト
レッドブルでは今週末のバルセロナに大きな改良を施した今季型車RB11を投入することにしている。伝えられるところによれば、劇的なほど短いノーズを備えることで空力面を大きく改善したものだという。
さらに、ここまで壊滅的とも言える状態が続いているルノーも、スペインには「仕様を変更した」新たなV6パワーユニットを投入することになっている。
ホーナーは次のように続けた。
「今後のレースでは大きな前進を果たしたいと思っている。そしてウィリアムズに、あるいはフェラーリにさえ、少しプレッシャーをかけていきたいね」
そして、改良版RB11でレッドブルのドライバーとしてふさわしい力を発揮できるかどうかということも、クビアトに課せられた目標だということになりそうだ。
だが、ウェバーは、レッドブルではすでに視線を2016年シーズンに向けているはずだと考えている。
「レッドブルは、来年はF1チャンピオン争いがしたいと思っているはずだ。厳しいシーズンを戦い続けながらそこに前向きなものを見いだそうとするなら、それはもう今年はあきらめることで早めに来年に備えることができるということだからね」とウェバーは語った。