伝説的な元F1チャンピオンであり、現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダが、昨年までフェラーリが不振に陥っていた本当に原因はフェルナンド・アロンソ(現マクラーレン)にあったとほのめかす発言を行ったことが報じられた。
だが、イタリアのメディアがこうした見方に対する反論を展開している。
■アロンソをやり玉にあげたラウダ
現役時代に3度F1王座についたラウダは、F1中国GP(第3戦)が開催された先週末の上海において、アロンソのことを「自分勝手で、気分屋で、ネガティブだ」とこきおろしたと伝えられている。
そのアロンソが離脱して迎えた今季、フェラーリはレッドブルからアロンソの後任として迎えた4年連続F1チャンピオンのセバスチャン・ベッテルとともに一気に好調の波に乗り始めた。
ベッテルは大方の予想を覆し、マレーシアGP(第2戦)でメルセデスAMGを打ち破ってフェラーリに35戦ぶりの優勝をもたらしている。一方で、マクラーレン・ホンダへと移籍した33歳のアロンソは、ここまでMP4-30で予選Q1も突破できない困難な状況に置かれている。
ラウダは、『La Repubblica(レプブリカ)』に次のように語った。
「変化によって(フェラーリには)新鮮な刺激が与えられたんだ。スポーツにおいては完全なものなどない。あるのは機能性だけだ。そして、今フェラーリはうまく機能しているよ」
■重要だったのはトップ人事の変化との見方も
だが、イタリアのF1関係メディアにおいて長老的な立場にある『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』のベテラン記者ピノ・アリエビは、ラウダとは少々違った見方をしているようだ。
「私から見れば、一番大きかったのは、フェルナンドがいなくなったことよりも、管理体制が変わったことだと思う」
スペインの『Marca(マルカ)』にそう語ったアリエビは、次のように続けた。
「今ではすべてのことが以前よりも理性的な方法で統率されていると思う。(ジェームス)アリソン(テクニカルディレクター)に全権が与えられており、会長ももはやスタンドプレーなどをするような人物ではないからね」
「フェラーリも今では普通のチームになったということだ。それ以上のものではない」
さらに、アリエビはアロンソとベッテルとの比較に関しても、「フェルナンドだってあのクルマに乗っていたらマレーシアでは勝てたはずだ。それは確かだよ」と主張している。
■アロンソによる悪影響があったのは確かだとする記者も
だが、『La Stampa(ラ・スタンパ)』のステファノ・マンチーニ記者は、フェラーリのドライバーが変わったことによる効果を無視するのは間違いだと次のように語った。
「フェルナンドは素晴らしいドライバーだ。最高とまでは言えないとしても、最高レベルであるのは確かだ」
「だが、近年、彼が非常に閉鎖的だったというのも事実だ。彼は直接仕事をしていたグループの中でバリケードを築いていたし、そうした閉鎖的な行為がチームに何らかの影響を及ぼしていたのは確かだ」
「ベッテルに関しては、少し違うように見える。常にほほ笑みを絶やさず、より前向きな雰囲気を持っている。だが、私は、それはひとつのサイクルが終わり、新たなサイクルが始まったということだと考えているよ」
■現在のフェラーリの好調は前体制の遺産だとする声
一方、『La Repubblica(レプブリカ)』のマルコ・マンチーニは、セルジオ・マルキオンネ会長や、チーム代表のマウリツィオ・アリバベーネ、そしてアリソンやベッテルによって率いられる新たなフェラーリも、旧体制のもとで続けられてきた仕事の恩恵を受けているのは確かだと次のように主張した。
「進歩的な変化が起こり始めていたんだ。アリソンへ全権を与えるという方向性は(ステファノ)ドメニカリ(元チーム代表)によって始められ、それを(マルコ)マティアッチ(前チーム代表)が引き継いだ。そして今もそれが継続されている」
そう述べたマンチーニは、次のように付け加えた。
「近年では、フェルナンドのエゴが重荷になっていたのは事実だ。だが、マレーシアでの結果はドライバーによるものではないよ。昨年であればたとえベッテルであっても勝てなかっただろう」