セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の快勝に終わった、2015年F1第2戦マレーシアGP。力負けを喫したメルセデスAMGのトト・ヴォルフは、これで「バカバカしい」エンジン性能均一化の要求が止むよう願っている。
メルセデスAMGの圧倒的優位ばかりが浮き彫りになった開幕戦オーストラリアGPでは、レッドブルのF1撤退まで話が発展。彼らは、現行F1規則で崩れた競争バランスを元に戻すには人の手で「性能均一化」を行う以外にないと主張するのだった。
ところが、わずか2週間後のマレーシアでベッテルは見ごとにシルバーアローの2台を破り、フェラーリ復活ののろしを上げた。
メルセデスAMGによるセーフティカー出動中の作戦ミスも囁かれるが、ベッテルは「彼らをやっつけてやった。文句はいわせない」と笑顔で語った。
実際のところフェラーリはメルボルンから好調だった。さらにセパンでは初日のフリー走行早々、ロングランのペースでメルセデスAMGをじゃっかん上回るなど、世界チャンピオンチームに匹敵するが速さを見せた。
ベッテルは無線で彼のエンジニアに、こう伝えた。「フェラーリが戻ったぜ」
■敗れたハミルトンは
メルボルンの勝者で2014年F1世界チャンピオンのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)も、これには納得だ。表彰式の前、彼はベッテルに小声で「速かったなあ」とフェラーリを称えた。
その表彰式でハミルトンは、インタビュワーを務めたF1解説者のエディー・ジョーダンに次のようにいう。「いやあ、彼ら(フェラーリ)のペースはすごかった」「あの速さに手がでなかった」
政治的な「性能均一化」の働きかけが見られる一方、メルセデスAMGのヴォルフは、フェラーリに敗れて散々な一日としながらも、「F1にはめでたい日」だったと述べた。
ハミルトンも、誰とは特定しなかったが、フェラーリ勝利でパドックは「押し黙る」はずだと語っている。
ヴォルフもこれに同意、「性能均一化のバカバカしい話を終わりにしたい」とした。
奇をてらったレース運びをせず、フェラーリがメルセデスのペースに「並んだ」ことで、少なくともレッドブルの政治的な目論みは崩れた。
彼らは、悪化したルノーとの関係を修復してマシン開発を推進するしか手はない。
■どうするレッドブル?
29日(日)のマレーシアGP決勝で2台ともベッテルに周回遅れにされたレッドブル。ヘルムート・マルコ博士はドイツのテレビ局『Sky(スカイ)』に、今後はルノーと手を合わせて改善に取り組むと次のように語った。
「オーストラリアGPでは感情が先走ってしまった」「しかし、われわれも方向性が見えてきた。第2戦にして早くも、調子が上向いたのは神に感謝だ」
しかし、それでレッドブルとルノーのF1撤退話が消えるわけではない。F1「経営」について、引き続き考えるという。
「つまりこういう話だ。レッドブルやルノーだけではなく、FIA(国際自動車連盟)やF1の商業権を持つ団体などの全F1関係者が(考えなければならない)。いかにしてルノーのような企業が再びF1にメリットを感じ、参戦に必要な意義を見出すかをね」
つまりマルコにとっては、29日(日)にフェラーリが上げた勝利も、今のエンジン規則でF1が機能している証拠とはならないのだ。
「確かにフェラーリは、ここセパンで強かった」とマルコ。「しかし、彼らはマシンも優れている。タイヤの減りもしっかり抑えている。それにセバスチャン・ベッテルはこのサーキットが大のお気に入りなのだ」
「彼らのエンジンが長足の進歩を遂げたのは間違いない。だが通常のレースコンディションでは、依然としてメルセデスAMGからコンマ5秒以上遅れている」
「これでは、まだダメなのだ」「(マレーシア特有の)高温もあるし、しかも、あのコースだ。それにメルセデスAMGはセットアップが完ぺきではなかった」
「F1全体のパワーバランスは変わっていない」とするマルコだった。