2010年から2013年までF1タイトルを独占してきたレッドブルだが、F1が新たなエンジンルールを導入した2014年にはメルセデスAMGにその王座を奪われていた。そして、2015年シーズンの開幕となった先週末のF1オーストラリアGPでも厳しい現実をたたきつけられることになった。
オーストラリアGP決勝では、大方の予想通り、メルセデスAMGが余裕で1-2フィニッシュを決めた。だが、レッドブルに至ってはダニール・クビアトのクルマがグリッドにつく前に戦線離脱する始末。さらに、レースではダニエル・リカルドが昨年は1ポイントもあげることができなかったザウバーのルーキー、フェリペ・ナッセの後ろで6位となるのがやっとだった。
その結果に憤慨したレッドブルでは、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)に対し、このままメルセデスAMGに独走を許すことはF1をダメにしてしまうことにつながるとし、現在のエンジンルールを早急に見直すよう訴えかけている。
■レッドブルの言い分はおかしいとハミルトン
こうしたレッドブルの姿勢に関し、2014年のF1チャンピオンであるルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)はニヤリと笑いながら次のように語った。
「レースの後でセバスチャン(ベッテル/フェラーリ)に言ったんだよ。“君はこれを4年間続けてきたんだよ。君は4年間ずっと僕たちより30秒前にいたんだ”ってね。つまり、僕もそれがどういう感覚なのかは知っているってことさ」
ハミルトンは、F1で最高のクルマを持つチームがライバルたちを圧倒するようなことは、別に今に始まったことではないと次のように続けた。
「マルシャにいてF1チャンピオンになれる者などいないだろう? ファンジオ(1950年代に5回F1チャンピオンになった伝説的F1レーサーであるファン・マヌエル・ファンジオ)だって素晴らしいクルマがあったからなんだ」
■メルセデスAMGがいい仕事をしているだけだとバトン
ここまでさっぱり熟成の進まないマクラーレン・ホンダMP4-30に苦しめられているジェンソン・バトンでさえ、突っ走るメルセデスAMGに何らかのしばりをつけるべきだとのレッドブルの意見には賛成できないと次のように語った。
「制限すべきようなものは何もないよ。だって、メルセデスAMGが、ほかのチームがやっていないことをやっているようには見えないからね」
バトンは、レッドブルはその強さを示している間、「グレーゾーンをうまく利用することが多かった」ものの、メルセデスAMGに関しては単にほかのチームよりも「いい仕事をしているだけだ」と語り、逆にレッドブルの姿勢に疑問を呈している。
バトンは、メルセデスAMGを批判することはフェアではないと次のように続けた。
■現状を憂うバトン
「彼らのせいでF1がダメになると言われている。難しい状況だよね。最高を目指してはダメだということになるわけだからね」
「F1にとっては、もっといろんなドライバーたちによってトップ争いが繰り広げられるほうがいいのはもちろんだ。だけど、それはメルセデスAMGの過ちじゃないからね」
そう語ったバトンは、次のように付け加えた。
「もしレッドブルが、トップから1秒遅れでゴールしていたとしたら、彼らはこれほど大騒ぎしただろうか? ノーだね」