チームとレース契約を交わしたドライバー2人がマシンに陣取るザウバーのピット。ところが同じサーキットには、やはりザウバーのレース契約を持つギド・ヴァン・デル・ガルデがいるという異常事態。
裁判の影響でマーカス・エリクソンとフェリペ・ナスルは午前中の1回目、1周も走れなかった。混迷のザウバーを象徴する出来ごとだ。
それより前、ヴァン・デル・ガルデはエリクソンのレーシングスーツを着てナスルのマシンでシート合わせを行なった。
それもこれも、ビクトリア州最高裁の命令に服してのことだ。もしも破ればマシンは押収され、チームCEOのモニシャ・カルテンボーンは逮捕されかねない。
当のカルテンボーンは13日(金)、初めてサーキットに姿を現したが、しばらくしてパドックを後にしたとみられる。
チームのツイッターは9日(月)以降、ひとことのツイートもない。
問題は、チームがヴァン・デル・ガルデ側の要求にしっかりと応えていないことにあるという。うわさでは、ヴァン・デル・ガルデのスポンサーは昨年8月、チームに800万ドル(約9億7,000万円)を前払いしている。
12日(木)夜、ザウバーはFIA(国際自動車連盟)に、今週末のドライバーはエクレストンとナスルの2人と報告した。
ヴァン・デル・ガルデが胸から下げているのは、ただのパドック・パス。この日、ヴァン・デル・ガルデの居場所はチームの事務棟にとどまった。
「僕はどこにも行かない」と話すヴァン・デル・ガルデ。エリクソンのスーツを脱いで、私服でメルボルンのパドックを行ったり来たりしている。
どうやらFIAはヴァン・デル・ガルデのためにスーパーライセンスの発給を急いでいるようだ。14日(土)のフリー走行と予選に間に合う可能性はある。
それについて質問された彼は、「分からない」と答えるのみだ。「そのうち、はっきりするだろう」
金曜(3/13)午後には裁判所の手続きが進む見通しだ。
ヴァン・デル・ガルデの弁護士によると、ザウバーは一枚の文書に署名を拒否しているという。スーパーライセンスの申請書だ。
「ザウバーは事務手続きの完了を拒んでいる」と弁護士。
苦しい戦いを続ける小チームにF1パドックは総じて同情的だが、今回のザウバーの行いに限っては眉をひそめる者が多い。
ニキ・ラウダは、このような危機にあってザウバーのやり方は「奇妙だ」と、次のようにスイス『Blick(ブリック)』紙に語った。
「決まりごとは守らねばならない」「これでも控えめにいうが、ビジネスで職務怠慢は世界どこへ行っても同じだな」