ドイツにおけるF1の人気が下がってきていることをメルセデスAMGのトト・ヴォルフ(ビジネス担当エグゼクティブディレクター)が認めた。
数日前、ヴォルフは開催危機が叫ばれている今年のF1ドイツGP(7月19日決勝予定)に関し、開催に向けて主催者側とF1最高責任者であるバーニー・エクレストンが最終的に合意に至ることができるよう、メルセデスとしても何らかのサポートをしたいと語っていた。
メルセデスAMGの非常勤会長であるニキ・ラウダは、オーストリアの『APA通信』に対し「問題はすべてドイツにあるんだ」と語っている。
2014年にそれまでの自然吸気V8エンジンに変えて、新たなV6ターボによるパワーユニットを導入したF1。だが、複雑なルールや、エンジンから大音響が失われたことにより、ファンの数が全体的に減ってしまったと批判されている。
しかし、ラウダは、2015年には極めて重要であるとされる音の問題なども改善されているとし、次のように続けた。
「F1は正しい方向に向かっているよ。現時点で大切なのは、レース主催者たちが自分たちの仕事をうまくやることだ」
だが、ヴォルフは、苦境に立たされているドイツのサーキットへの同情をこめながら、『Der Standard(シュタンダルト)』に次のように語った。
「ドイツでは飽和状態を迎えているんだ。誰もが二日酔いのような気分を味わっている」
ヴォルフは、過去20年の間に、ミハエル・シューマッハとセバスチャン・ベッテルの2人のドイツ人ドライバーが合計で11回もタイトルを取るというあまりにも素晴らしい成績を残し続けてきたことにより、かえってF1に対する興味が薄れるという結果を招いてしまったと分析しているようだ。
「今では、ほかにも大衆をとりこにするスポーツがあるからね」
そして、2014年のF1を圧倒的に支配したのもドイツの自動車メーカーであるメルセデスだった。せっかく勝利を飾っても母国でのF1人気が上がるどころか下降線をたどるということは、チーム責任者であるヴォルフにとってもうらめしく思えるに違いない。
だが、ヴォルフは、ドイツGPが開催の危機を迎えているのは、昨年バーニー・エクレストンがドイツにおいて贈賄容疑で訴訟を起こされたことも影響しているのではないかとの見方に関してはきっぱりと否定している。
「それは関係ないよ。エクレストンにとっての利益は商業的なものだけだ」
「彼は売り上げを伸ばさなくてはならない。それが彼の仕事だからね」
だが、そのエクレストンの仕事によって、ヨーロッパでの伝統的なF1レースが減り続けているのも事実であり、これについてもしばしば批判にさられている。
ヴォルフも、伝統あるレースが減ることは問題だと認識しながらも、エクレストンの立場も理解できると次のように付け加えた。
「歴史あるサーキットは重要だよ。だが、F1の商業権を持つ者が最大限の売り上げを確保したいと考えることも理解はできる」