近年、4度F1チャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルのヘルメットデザインを担当したことで有名になったヘルメットペインターのイェンツ・ムンザーが、F1ドライバーが本当の自分を表現するための手段を奪い取られたと主張している。
先週、ファンがドライバーを見分けやすくするという目的のために、今後はシーズン中のヘルメットデザインの変更が禁止されることが明らかになった。
この決定により2015年は自分もかなり暇になってしまうだろうと認めたムンザーは、『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように続けた
「それに、これはドライバーたちが自分自身を表現する機会を奪ってしまうことにもなる」
「それに対してドライバーも意見が言えるはずだと言うかもしれないけれど、今日のF1でそういうことが本当に可能なのかな?」
今回の新たなルールに対応する手段はあるかと尋ねられたムンザーは、「問題はそのルールをどう解釈するかだね」と答え、次のように続けた。
「デザインの変更とは何を意味するかということだ。ひとつの色を変えることもダメなのかな? それに、実際にレースごとに誰がすべてのヘルメットをチェックするんだろう?」
「もし彼らが専門家を必要とするのなら、僕ならそれをやる暇もあるだろうけれどね」とムンザーは笑いながら語った。
今回のF1の決定によって、ムンザーは今後自分の収入が脅かされることになる。それについてFIA(国際自動車連盟)を訴えるつもりはないのかと尋ねられたムンザーは次のように答えた。
「まさか! 僕は、自分の楽しみでドライバーのためにデザインをしているんだ。それによって金もうけをたくらんでいるわけじゃないよ」
「概して、F1は僕にとって金を稼ぐ手段ではないんだ。でも、いい宣伝になるのは事実だけれどね」
F1ドライバーの中にも今回のデザイン変更禁止に賛成する者もいる。例えばフェリペ・マッサ(ウィリアムズ)もそうだ。マッサはその理由を、ヘルメットは自分にとって「第二の顔」だからだと説明している。
このマッサの考え方について意見を求められたムンザーは、次のように答えた。
「彼は自分のヘルメットのデザインをあまり変えないドライバーのひとりだ」
「でも、彼だって特別なヘルメットを作ったことがあるよ。彼のフェラーリでの最後のレースには僕たちがそれを作ったんだ」
そう指摘したムンザーは、次のように付け加えた。
「だけど、彼も今後はそういうことができなくなるわけだ。モナコでのレースだろうが、ホームレースだろうがね。あるいはジェンソン・バトン(マクラーレン)が父親に捧(ささ)げるピンクのヘルメットをかぶっていたけれど、そういう何か特別な機会があったとしてもダメだということになる」