22日(日)にバルセロナで起こったフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)のクラッシュの原因についてさまざまな憶測が飛び交っている。
ここまでのところ、マクラーレンとしては今回の事故はテストにつきものの「普通のクラッシュ」であり、アロンソに関しては検査の必要があっただけだと語ったのみで、それ以上の詳しいことは何も明らかにしていない。
■あくまでも普通のクラッシュだと強調するマクラーレン
マクラーレンのレーシングディレクターであるエリック・ブーリエは、チームが出したリリースの中で「いくつかの報道を見ると、事故の大きさを大げさに見せるようなものもあるが、あれはテスト中に起こる普通の事故だったに過ぎない」と付け加えている。
だが、F1関係者や専門家、そしてその事故を目撃していた者たちは、一様にアロンソのクラッシュは「普通ではなかった」と主張している。
ブーリエも、アロンソが壁にクラッシュしたマクラーレン・ホンダMP4-30はとりたてて大きなダメージを受けていたわけではないと認めている。だが、チームはそのクルマを修理して午後に予定されていたジェンソン・バトンのテスト走行を行うことはせず、すぐにテスト打ち切りを決めていた。
クラッシュしたMP4-30の写真を見ても、確かにそれほど大きなダメージを負っていたようには見えない。だが、アロンソは当初意識がなく、病院へ転送される際には鎮静剤の投与が必要だったとも報じられている。
■マクラーレン・ホンダの沈黙をいぶかるメディア
ドイツ人記者のラルフ・バッハは、『f1-insider.com』の自身のブログに、「彼(アロンソ)の頭がクラッシュする前から傾いていたとカメラマンが報告しているが、これはどうしてなんだ?」と書き、次のように付け加えている。
「それに、どうしてマクラーレン・ホンダはこれほどまでに秘密にするのだろう?」
ドイツの大手紙である『Bild(ビルト)』も疑問を投げかけている。とりわけ、今年からマクラーレンにワークスエンジンを供給するためにF1復帰したホンダが、ここまでERS(エネルギー回生システム)にトラブルを抱えていただけに、今回のアクシデントは何かそれと関係があるのではないかというのだ。
「アロンソは(クラッシュする前に)バッテリーから発生した有毒物質を吸い込んだことで、すでに気を失っていたか、もうろうとした状態になっていたのではないだろうか?」それとも「感電していたのだろうか?」との疑問を呈した『Bild(ビルト)』は、次のように付け加えている。
「アロンソのチームが沈黙を守り、すぐにテスト中止を決めたことで、さらに謎を呼んでいる」
■カメラマンやドライバーの気になる証言も
さらに、信頼のおけるメディアとして知られる『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』も次のように書いている。
「カメラマンたちは、まるでアロンソが故意に壁に向けてハンドルを切ったように見えたと報告してきている」
さらに、アロンソが壁にクラッシュしたとき、そのすぐ後ろを走っていたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)は、それほどスピードを出していたわけではないアロンソのクルマが突然壁の方に向かって方向を変えたのは「変だった」とドイツのメディアに語った。
「あれはただの事故のようには見えなかったよ。それから彼(アロンソ)は、僕の視界から消えるまでの間、壁にそって何度か弾んでいた」とベッテルは付け加えている。
■事故の原因は強風だと主張するマネジャー
だが、アロンソのマネジャーであるルイス・ガルシア・アバドも、マクラーレン同様そうした憶測を否定し、アロンソがめまいを起こしてクラッシュしたというような事実はないと主張している。
「あのときはかなり強い風が吹いていた」とスペインの記者たちに語ったアバドは、「それが彼を壁に押しやってしまったんだ」と主張。
さらに、アバドは、サスペンションかフロントウイングに何か問題が発生していたのではないかとの疑問に対し、壁にぶつかった衝撃で壊れただけだと主張し、「F1ではああしたことが起こるのも特別不思議なことではない」と語っている。
■アロンソ本人とはまだ事故の話ができていないと明かしたマネジャー
「ともかく、今はこの件について話をすべきときではないよ。彼(アロンソ)は病院だしね」
「我々はまだ彼とこのことについての話をしていないんだ。だが、我々にはクルマに特別な問題がない状態で起こったことだというのは分かっている」
そう語ったアバドは、「それに、マドリード対エルチェ(スペインのサッカーリーグ)の試合結果についてもまだ話していないんだ」というジョークを付け加えた。
ベッテルが、そのクラッシュに関して「変だった」とコメントしたことについて質問を受けたアバドは、次のように答えている。
「ベッテル氏には自分の言いたいことを言う権利があるし、それはそれで構わないよ」