レッドブルからフェラーリに電撃移籍したセバスチャン・ベッテル。伝統あるF1チームだけに、本人もたいへんな熱の入れようだ。
「いろいろと変化したものだね」と、新チームの変ぼうぶりについてイタリアのテレビ局『RAI』に話すベッテル。「何とドライバーまで」といってニヤリと笑う。
V6ターボが導入された昨年の彼は、笑顔を見せるなど稀だった。実に、引退さえ考えていたとレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは明かしたものだ。
ベッテルは母国ドイツの大先輩、ミハエル・シューマッハが活躍していた頃のF1が大好きだ。大音量のエンジンに強大なパワー、運転の難しさにひかれたのである。
それに、先日フェラーリが打ち出した「コンセプトカー」のCGも気に入っている。
「すごくクールだよね」とベッテル。
「あのマシンに大パワーのエンジンを載せたら、10年前のF1に戻る感じがしていいんじゃないかな」
「ドライバー目線で見ると、すごく魅力を感じる」
偉大なエンツォ・フェラーリの手によりモータースポーツの情熱を体現したチームに加入して、笑顔とモチベーションを取り戻したベッテル。
「フェラーリの一員になれて夢のようだよ」「ここにいるだけですごく嬉しい。でも、当然ながら皆が目指すところは勝利だ。そして、それこそ僕の野望でもある」
彼の頭に浮かぶのは、赤い跳ね馬に乗ってモナコGPで優勝する自身の姿だ。さらに、「モンツァでの優勝は夢のまた夢」と顔を輝かせる。
もっとも、現実は甘くない。新しいボスのマウリツィオ・アリバベーネと同じようにベッテルも、合同テストでのSF15-Tの好調ぶりに浮かれていない。「冬のF1世界チャンピオン」宣言など何の意味もないのだ。
「いいマシン恵まれた」と話すベッテル。「でも、それ以上は考えられない」
「レースに勝つためには、メルセデスAMGを倒せるようにならないと。その前に、ふたたび表彰台に立つ日がいずれ来てほしいものだ」
最後に、ベッテルにはもうひとつ打ち込んでいるものがある。イタリア語の習得だ。
「だんだん進歩しているんだ」といって、またしても笑顔に。「目と耳で理解するのは、かなりのレベルに達している。でも、ボキャブラリーがまだまだ足らなくてね」