今年最初のF1公式シーズン前テストが開始された1日(日)に、メルセデスAMGと2014年のF1チャンピオンであるルイス・ハミルトンとの契約延長交渉もスタートしたようだと報じられている。だが、両者の間にはすでにさまざまなかけひきが始まっているようだ。
最近、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフが、仮に2015年シーズン限りで現在の契約が満了するルイス・ハミルトンがチームを離脱することになれば、その後任候補ナンバー1はフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)だろうと発言したことが話題となった。もちろん、これはハミルトンとの交渉に向けた戦略的発言だと考えられている。
今年マクラーレン・ホンダへ移籍したアロンソだが、本当は2014年に圧倒的な力の差を見せつけたメルセデスAMGへの移籍を望んでおり、2016年にそのシートが空くチャンスを想定し、現在のマクラーレンとの契約には自分にとって有利な解除条項を盛り込んだようだともうわさされている。
だが、マクラーレン最高責任者のロン・デニスは、マクラーレンではどのドライバーとの契約においても「パフォーマンスによる契約解除条項などを盛り込んだことはない」とそうしたうわさを否定している。
■アロンソがメルセデスAMG加入のチャンスを狙っていたのは事実
しかしハミルトンは、アロンソが自分のシートを狙っているのは本当だとほのめかしている。
ハミルトンは、1日(日)に今年最初のF1公式シーズン前テストが開幕したヘレスで、昨シーズン終盤に自分がメルセデスAMGのトップたちに電話で伝えた内容を明らかにした。それは次のようなものだったという。
「僕はほかの誰とも話をしてはいない。僕はある人物があなたに電話したことは知っているけれど、僕はこの件にだけ集中しているし、誰にも電話を入れるつもりはないよ」
ここでハミルトンが語った「ある人物」とはもちろん、アロンソのことだ。
■アロンソをひきあいに出してもむだだとハミルトン
だが、ハミルトンは、かつて自分を育て上げてくれた元ボスであるデニスは、せっかく獲得したアロンソをすぐに手放すようなまねはしないだろうと次のように続けた。
「ロンはとても頭の切れる人物だ。彼は絶対にアロンソと1年だけの契約を結んだりしないし、ホンダだってそんなことはしないね」
どうやら、ハミルトンもメルセデスAMGに対し、アロンソをネタにしてプレッシャーをかけようとしてもむだだというけん制球を投げつけているようだ。
さらに、ハミルトン側も、ヴォルフに対して自分たちなりのプレッシャーをかけるという反撃作戦に出ているようだと伝えられている。
最近、ハミルトンがフェラーリとの予備交渉を始めていたようだとのうわさも新たにささやかれているが、これもハミルトン側が意図して流したものではないかとの見方もあるようだ。
■いずれ契約はまとまるとメルセデスAMG
そんな中、2012年シーズン終盤にハミルトンを当時在籍していたマクラーレンから引き抜くことに成功していたニキ・ラウダ(メルセデスAMG/非常勤会長)は、次のように語った。
「契約には何の問題もないよ」
「そのための適切な時期を見つける必要があるだけで、そうすればうわさなんかどこかへ消えてしまうさ」
一方、ヴォルフはハミルトンとの契約締結を急ぐ必要もないと考えているようだ。
「我々には、落ち着いて、開けっぴろげな、いい関係がある」
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったヴォルフは、次のように続けた。
「我々はお互いに信頼している。だからシーズン開幕前にすべてを片付けなくてはならないなどというプレッシャーはないよ」
「もちろん、遅くなるよりは早いほうがいいのは確かだよ。だが、予想外のことが起こるなどとは考えていないよ」とヴォルフは付け加えた。