マリオ・イリエンは、スイスが誇るエンジン設計の第一人者だ。そのイリエンが、最新世代のおとなしいV6ターボもちょっとした改良でF1にふさわしいノイズが生まれると主張している。
昨年F1に導入された「パワーユニット」の新規則で今のエンジンは、往年のV8やV10に比べてかなり静かな音しか発生しない。それが逆にたびたび議論の的となっているのだ。
バーニー・エクレストンは、その点の変更をプッシュすること度々だ。しかし、多少の研究と実験が昨年行われたにも関わらず、今年もF1は、同じ静音のエンジンで二年めのシーズンを迎えようとしている。
現在ルノーならびにレッドブルと仕事をしているイリエンはドイツ『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌のインタビューに答え、エンジンの基本設計はそのままに、小改良でよりノイジーにできると語った。
イリエンによると問題は、加圧された排気ガスを開放する「ウェイストゲート」のレイアウトだ。
「(ウェイストゲートは)排気ガスを大気に逃がすというより、長くて分厚いエグゾーストに流す。そのため音が失われるのだ」とイリエン。
もし別にバルブを設ければ、「エンジンから発生する音は直接、外に出るから、今までよりよっぽど聴こえるはずだ」とイリエンは予想する。
ただし彼のソリューションは、パワーユニットがある一定の「フェーズ」にあるときのみ作用する。バッテリーがフル充電の状態にあるのが条件だ。
「レースでは、効果が薄まるのは否めない」とイリエン。
また、現在の規則でウェイストゲートの位置は決まっているのもネックだ。イリエンはいう。「恐らくFIA(国際自動車連盟)は、(位置を固定しなければ、ウェイストゲートを)何らかの空力的な小細工に使われると懸念しているのだ」
では他に解決策は?イリエンは、より短いエグゾーストも効果ありとしている。ツインターボの導入によってホイッスルも大型になるという。
また、燃料の最大流入量を増やしてもエンジン音は高くなるとイリエンは指摘した。