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WEC王者となったトヨタ、秘密は「技術力」と「人間力」

2014年12月29日(月)19:03 pm

2014年WEC(世界耐久選手権)で悲願のワールドチャンピオンに輝いたトヨタ。その舞台裏をメディア向けシーズン報告会に出席したチーム首脳陣が語った。

出席したのは、木下美明チーム代表(TMG社長)、嵯峨宏英(トヨタ自動車ユニットセンター副センター長)、高橋敬三(TMSMモータースポーツオフィス シニアディレクター)、村田久武(トヨタ自動車モータースポーツユニット開発部長)だ。

2014年のレギュレーションでは、いくつかの変更があった。

燃料消費量と最大燃料流量が制限され、2013年比で20%から30%燃料が絞られるためエンジンパワーも落ちる。

さらに車幅が100mm狭められタイヤ幅も縮小されたため、コーナーリングスピードも落ちる。

これらの制限の中で、挑戦者トヨタはできるすべてをやったと言えるだろう。

多くの挑戦をした中で紹介したいのは「軽量化」、「エンジン」、「空力」、「ブレーキング」だ。

■軽量化 - ネジ一本まで見直した
2014年は2013年に比べ、加速エネルギーを発生させるMGUをフロントにも追加することになり4輪駆動になって重量が増えるはずだが、最低重量は870kgと昨年より45kg減らされた。

そこで、軽量化をするためネジ一本から全てを見直したという。

レギュレーションについて話し合っていた当初、村田久武ハイブリッドプロジェクトリーダーは、「こんなんじゃトヨタは重量が1t(トン)を超える」とACOに訴えていたそうだが、開幕戦では870kgで登場し、ACOに「やればできるじゃないか」と嘘つき呼ばわりされたという。

■エンジン - 燃料制限との戦い
2014年のエンジン規則ではこれまでの空気ではなく燃料を絞ることになった。少ない燃料でいかに馬力を出すかを追求し、エンジンの熱効率を最大化する必要があった。
エンジニアにとって難題だが、市販車開発にも生きてくるレギュレーションだった。

昨年のままでは25%もパワーが落ちるはずだった。そんな状況でエンジンの「燃料効率」の見直しと、「空力」を徹底的に開発した。

結果、熱効率は市販車を上回る40%の効率化に成功し、これから市販車へも生かされていくという。

■空力 - エアロ開発を徹底
燃料制限もあり、車幅も狭まり、タイヤも細くなったレギュレーション。当然、直線とコーナーリングスピードは落ち、ブレーキバランスも難しくなる。

そんな中、トヨタは空力を徹底的に磨いた。
直線スピードを上げるためにドラッグ(空気抵抗)を減らし、コーナーリングスピードを上げるためにダウンフォースを増やす。この相反する難題に挑戦した結果、直線もコーナーもスピードを上げることに成功した。

ル・マン用のローダウンフォース仕様とハイダウンフォース仕様の異なる車体を別々に開発、その比率は9:1だったという。たった1戦のために9割の力を注ぐ。ル・マン24時間は残念ながら悲願の優勝を手にすることはなかったが、結果的にそのローダウンフォース仕様は素晴らしい性能のマシンとなり、その後も活躍することになった。

■ブレーキ - ピカイチのブレーキング性能
今年から車載カメラが搭載されたが、そのカメラではライバルのアウディやポルシェよりも明らかにブレーキングポイントが奥だったという。つまり、アクセルを踏んでいる時間が長く、ブレーキを踏んでいる時間が短くなるため、スピードは上がる。

より短時間で急減速するのに重要なのは、ブレーキバランス。急減速しても車体が安定していたため、ドライバーは思い切ってブレーキを踏むことができたという。ライバルに比べてブレーキングポイントが違いすぎたため、「トヨタはABSを搭載しているんじゃないか?」と疑われたそうだが、そこはトヨタの技術開発によるものだった。

■人間関係 - 本気でぶつかった
今季の勝因のひとつとして、人間関係も大いに関係していた。チームには多くの人が関わっている。これまでは表面的な関係だったのを、本気で意見をぶつけるようになり、衝突しながら人間関係を深めたことも勝因の一つと言えるだろう。文字通り、チーム一丸となれたのだ。

今シーズン、悲願のWECワールドチャンピオンとなったトヨタ。その裏には日本人エンジニアたちの技術への挑戦と熱い人間関係があった。

■関連動画
■【動画】WEC最終戦サンパウロ6時間ハイライト(2:02 音楽付き)

■【動画】WEC最終戦サンパウロ6時間レースハイライト(4:53 解説付き)

■【動画】WEC最終戦サンパウロ6時間 トヨタが世界王者に(52:18 ロングバージョン)

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