4度チャンピオンに輝いた元F1ドライバーのアラン・プロストが、1980年代終盤に伝説的F1ドライバーであるアイルトン・セナと自分が陥ったような状況とならないよう、メルセデスAMGに対して貴重なアドバイスをしていたことが明らかとなった。
今季のタイトル争いを繰り広げたメルセデスAMGのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグの間に、以前はぎくしゃくした関係があったことは明らかだ。
■「セナ対プロスト」に似た状況となりつつあったハミルトンとロズベルグ
ハミルトンは、F1モナコGP(第6戦)の予選で、ロズベルグがわざとミスを犯して自分の予選走行を妨害したとの疑いを抱き、あからさまにロズベルグを非難した。そして、その3か月後に行われたベルギーGP(第12戦)でロズベルグに接触されてリタイアに追い込まれたときには、これは「戦争」だと公言していた。
そうした状況は、多くの者に1988年と89年にかけて繰り広げられた「セナ・プロ対決」を思い起こさせるに十分だった。当時、圧倒的な力を誇ったマクラーレン・ホンダのチームメート同士であったセナとプロストはコース上で激しく争うとともに、クルマを降りてからもその関係は険悪そのものだった。
今季、そのセナとプロストのような状況になってもおかしくないような2人をうまく管理したのは、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフだった。そのヴォルフは今週、イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』に対し、プロストの口から直接こういう状況にどう対処すべきかのアドバイスを受けていたことを明らかにしている。
■プロストが魔法の言葉を教えてくれたとヴォルフ
「過去の失敗から学ばなくてはならない。我々は、ハミルトンとロズベルグと契約を結んだときに、少しばかりそのことについてニキ・ラウダ(非常勤会長)と話し合いをしていたよ」
そう語ったヴォルフは、次のように続けた。
「そして、今シーズンが始まったころにプロストと話をし、彼がアイルトンとの間に抱えたような状況に陥らないために、我々が行うべきことについての意見を求めたんだ」
「そのとき、彼が魔法の言葉を授けてくれたのさ。透明性という言葉をね」
さらに、ヴォルフは続けた。
「彼は私に、あの時代のマクラーレンはドライバーに対して透明性のあるやり方をしていなかったと教えてくれた。それは多分、セナは新しくチームに加入してきたし、まだチームでも目新しい存在だったからだろうね」
■プロストが示した教訓を守ったメルセデスAMG
「プロストが言うには、結局、ドライバー間のライバル意識がメカニックたちにまで広がってしまい、チームがどのように統制されているのか分からなくなったというんだ。チームが2つに分離してしまっていたのだとね」
「アランは、同じようなことにならないよう、私に非常に的確なアドバイスをしてくれたよ。“2人のドライバーを平等に扱い、全員に対して同じことを話すようにすること。ひいきをしてはならない。それが争いごとを避ける唯一の方法だ”とね」
そう述べたヴォルフは、最後に次のように付け加えた。
「そして、私はそれを実践したんだ。それは、いいチームリーダーになるために私が学んだことの中でもとりわけ重要なレッスンのひとつだったよ」