F1では、2014年シーズンから新たなV6パワーユニット時代を迎えていた。そして、この劇的に変更された新ルールのもとで行われたシーズンはメルセデスAMGの圧勝に終わった。
19戦中優勝が16回、ポールポジションは実に18回という圧倒的な強さを誇ったメルセデスAMG。ライバルF1チームたちは、ただ銀色に輝くメルセデスAMGの2014年型車W05の優秀さに驚嘆の声を上げるしかなかったようだ。
■今季のメルセデスAMGマシンを称賛するドライバーたち
今季、そのライバルチームのひとつであるウィリアムズは、メルセデスエンジンに移行したことで昨年の9位から今季は3位にまでチームランキングを躍進させていた。
だが、『Sky(スカイ)』から、F1の歴史において今年のメルセデスAMGのクルマほど圧倒的な強さを見せつけたF1カーが過去にあったと思うかと質問されたウィリアムズのバルテリ・ボッタスは、「なかったんじゃないかな。ないよ!」と答えている。
「ある日シャワーを浴びながら、“これほどまで圧倒的だったことはこれまでにはなかった”と心の中で考えたことがあったよ」
そう語ったのは、同じくメルセデスエンジンを搭載していたマクラーレンのジェンソン・バトンだ。
「僕は、これまでのF1の歴史の中でも最高のクルマだと思うよ」とバトンもメルセデスAMGのW05を称賛している。
今季、メルセデスAMGのドライバー以外では唯一表彰台の真ん中に立ったことのあるレッドブルのダニエル・リカルドも同意見のようだ。
「昨年はレッドブルが強かったけれど、僕は、また誰かがこれほどの強さを見せつけることなどできないだろうと思っていたんだ。ところが、彼ら(メルセデスAMG)がそれをやってのけてしまった」
「これまで、これほどの圧倒的な力を見せたチームなんて思い出せないよ」とリカルドは付け加えた。
■メルセデスAMG成功の秘密はプロジェクトの早期開始
メルセデスAMGが今季これほどまでの大成功を収めた秘密は、間違いなく2年ほど前に予算を大幅に積み上げ、まだほかのエンジンメーカーやチームが本腰を入れる前から、2014年に向けたエンジンやシャシーの開発に集中してきていたからにほかならない。
メルセデスAMG首脳陣の1人は、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、自分たちがどれだけ早期に大きく変更されることになるルールについて検討を始めていたかということを思い出しながら、次のように語った。
「我々はFIA(統括団体である国際自動車連盟)に対してルールに関する質問を行っていた。あの時点ではほかにそんなことをしていたのは誰もいなかったよ。我々のエンジンが非常に優れていたのはそのためだ」
「我々がそれ(エンジン)をクルマに統合した方法や、タービンとコンプレッサーを分離させたようなことなどは、一晩で簡単にできるようなものじゃないんだ」
そう語ったメルセデスAMG首脳は、次のように付け加えた。
「メルセデスのエンジニアは、こうしたアイデアを2013年初旬には持っていた。チームは、新たなルールはチャンスであるととらえていたんだが、同じことを試みようとしたところがほかにはなかったということは驚きだったね」