メルセデスAMGの非常勤会長であるニキ・ラウダが、2014年にメルセデスAMGにF1タイトルをもたらすことにつながる「重要な瞬間」が2012年にあったと語った。
ラウダによれば、それはマクラーレンと神のおかげだったという。
2012年シーズンの終盤に、ラウダは当時マクラーレンに在籍していたイギリス人ドライバーのルイス・ハミルトンにメルセデスAMGへ移籍するよう説得を試みていた。そのハミルトンは今季通算2度目のF1タイトルを獲得するとともに、メルセデスAMGに初のコンストラクタータイトルをもたらしている。
ラウダはそのときのことを思い出しながら、オーストリアのラジオ局『O3』に次のように語った。
「マクラーレンは彼(ハミルトン)をチームにとどめておきたいと思っていたし、契約更新を申し出ていた」
「そこで、私は彼に明日会ってくれるよう頼んだんだ。それは決勝が行われる日曜日のことだった」
ラウダが言及しているのは、2012年の9月23日に決勝が行われたF1シンガポールGPのことだ。そのレースでハミルトンは圧倒的な速さでポールポジションを獲得。レースでも優勝するのはほぼ間違いないだろうと考えられていた。
ラウダは続けた。
「決勝の前に、私はルイスが(ドライバーズパレードの)トラックから降りたときに彼の目を見なきゃと言ったんだ」
「私はその朝に彼にメールを送り、我々のところに来るつもりがあるのかどうかを尋ねていた。だが、彼は私のほうを見さえしなかったよ。彼は私を無視し、そのまままっすぐに歩き去ってしまった」
「私はそのとき“これはまずい”と思ったよ」
そして決勝レースがスタート。ハミルトンは順調にトップを快走していた。ラウダはパドックからレースを眺めながら、天の助けを求めていたという。
「私はこうつぶやいていたよ。神様、一度でも私を助けてくださるお気持ちがあるなら、今マクラーレンを故障させてください、とね」
「2度ほどそんなことを念じたよ。そしたら“バンッ!”だよ」
トップを走りながら、ギアボックストラブルによりリタイアを余儀なくされたハミルトンに、ラウダはすぐに連絡を入れたという。
「私は即座にルイスにメール攻撃をしかけたよ。その3週間後、我々は契約書にサインしたんだ」
「これが、今季我々が大きな成功を収めることにつながった、パズルの重要なピースのひとつだったんだ」