2014年F1最終戦アブダビGPのパドックは、日いちにちと人が増えている。関係者は、早くも今季チャンピオンの予想に忙しい。
「ルイス(ハミルトン)は今年、何度となく素晴らしいレース運びを見せた」と話すのは、昨年F1を引退したマーク・ウェバーだ。「アブダビの彼は最強だろうね」
「むしろ、アブダビに限らずどこでも強い」というウェバーだが、彼の意見はパドックの大勢を占める。
「誰がどこでいいレースをしたなんて関係ないね。過去は過去、今は今だ」「二人(ハミルトンとニコ・ロズベルグ)とも今年は、ほんとうによくやっている」と、ウェバーはオーストリア『Salzburger Nachrichten(ザルツブルガー・ナッハリヒテン)』紙にコメントするのだった。
1996年のF1王者、デイモン・ヒル。彼もハミルトン推しである。
「ルイスは決めてくれるはずだ」と、ヒルは、次のようにドイツ『Bild(ビルト)』紙に語った。
「一対一のレースでルイスがニコにタイトルを奪われるなんて、私には想像できない。ニコだって、ルイスのほうが一枚うわてなのは承知していると思う」
シーズン半ばで戦線を去ったマルシャのチーム代表ジョン・ブース。彼はイギリス『Mirror(ミラー)』紙に、もしロズベルグがハミルトンを下してタイトルを奪うような結果になれば「もう笑うしかない」とコメントしている。
メルセデスAMGは、二人に対して平等な扱いを貫いているが、チームCEOのトト・ヴォルフは今週、マスコミに心境を吐露。仮にハミルトンがマシントラブルでタイトルを失ったら、それはポイント二倍の制度が招く「悲劇」だと語った。
しかし23日(日)にチェッカーフラッグが降られ、決勝レースが終了した時点で、どちらかのドライバーは肩を落とすのが定めだ。
オーストリア『Sportwoche(シュポルトヴォッヘ)』誌が伝えるところによるとメルセデスAMGは、例年どのチームも作成する、新F1王者の名入り祝勝Tシャツを用意しないという。
これについてヴォルフは、次のように説明する。「長時間にわたってルイスと話し合ったところ、彼ははっきりと口にしたんだ。23日(日)は、どちらかのドライバーにとってF1キャリア最高で、もう一人にとってはもっとも惨めな一日になるだろうとね。そのとおりだと思う」
チーム会長のニキ・ラウダもヴォルフに同調する。「私にとっては二人とも世界王者だが、アブダビGPが終わってチャンピオンを名乗れるのは、一人だけだ」
勝負の行方がどうあれ、ハミルトンは、レース後ただちにラウダとヴォルフを相手に2016年以降の契約について話し合う模様だ。
ラウダはイギリス『Daily Mail(デイリー・メール)』紙に、こう話す。「ルイスはフェラーリと契約したがっているといった話を耳にしたが、そんなことはない」
「シーズン終了まで契約交渉はお預けといってきたのは、ルイスのほうだ。彼はレースに集中したがっていた。われわれは、一も二もなく同意したよ」
「彼は日曜日に勝っても負けても、チームに残る」と、ラウダは語った。