いよいよ今週末の最終戦アブダビGPで今季F1王者が決まる。四年間守ってきた王座を間もなく手放すセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が彼の後継者になる可能性ありと考えている。
現在ドライバーズ選手権をリードするのは、いうまでもなくロズベルグの僚友ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だ。その差は17ポイント。最近の走りから見て、二度目の栄冠を狙うハミルトンが圧倒的に優位なのは明らかだ。
アブダビを最後に前チャンピオンとなるベッテル。長年、苦楽を共にしたレッドブルともお別れだ。そんな彼は、ロズベルグがタイトルを獲る可能性を否定できないという。
「二人とも王者にふさわしいよ」と、ドイツ『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』紙に話すベッテル。
「勝利数ではルイス(ハミルトン)がニコ(ロズベルグ)を上回っている。ただ、ニコのドライビングは非常に安定していて賢い。二人は違うタイプのドライバーだが、今年はどちらも、すごく乗れている」
ベッテルは、ロズベルグが抱える事情を2010年の自身と重ねあわせる。あの年の最終戦は、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)と当時ベッテルのチームメートだったマーク・ウェバー(現WECポルシェ)がポイントで有利な立場にいた。
「二人とも総合優勝に必要なポイントを上げることができなかったのはラッキーだったね」
「あれにはほんとうに驚いた」とベッテル。「必要なポイントを上げる確率は、数字上、彼らの方がよっぽど高そうだったのに」
「あの時の僕と同じく、ニコもやはり厳しい立場にいるのは確かだ」とベッテルはいう。
「(最後の)レースで優勝するのが唯一のチャンスと分かっていた僕は、ただただ、自分の仕事に集中しようと心がけた」「例えばレース中も、無線で選手権の暫定順位なんて余計な情報は聞きたくもなかった」
ところでベッテル自身の今季最終戦だが、本人は、「奇妙でとても感情的な」週末になると予想する。
2015年はフェラーリ移籍が確定的なベッテル。だが、彼の実力に賭け、F1の星に導いてくれたレッドブル社主ディートリッヒ・マテシッツの恩には感謝してもしきれない。
「ディートリッヒは僕を信じてくれた。そしていったんだ、”この小僧にチャンスをやれ”とね」とベッテル。
「あの頃の僕は、すごく困難な状況に苦しんでいた。僕を信じる人なんて、ごくわずかだったんだ。チャンスをもらったのがきっかけで、あとは何だかトントン拍子さ。神に感謝するよ」と話すベッテルだった。