8日(土)に行われたF1第18戦ブラジルGPで、今季10回目のポールポジションを奪った、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)。年間最多ポール獲得者の彼には、新しくFIA(国際自動車連盟)が創設した「ポール・トロフィー」が贈られる。
それはそれで名誉ある賞だが、ロズベルグがほんとうに欲しいのは、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)が先週、箱に入れてFIAに送り返したF1世界チャンピオンのトロフィーだ。
今年、この大杯に名が刻まれるドライバーはロズベルグか。あるいは、選手権リーダーで彼のチームメート、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)か。
本日のブラジルGP決勝を前にロズベルグは、ハミルトンから24ポイントの遅れを取っている。インテルラゴスが終了すると、残すは最終戦アブダビGP(11/21-23)のみ。こちらのレースでは、通常の倍のポイントが付与される。
もはや失うものは何もないロズベルグだが、その心境を本人にきいてみた。「”失うものはない”というのは、違う気がするなあ。だってF1世界タイトルだよ!?」
彼が第一回「FIAポール・トロフィー」にあまり大騒ぎしないのは、さらに価値ある大賞の獲得に賭けているためか。
だが、F1最速男ハミルトンをさしおいて今季ここまで10回のポールポジションは、大した記録だ。
路面が新舗装されたのに加え、サンパウロの標高をものともしない新V6ターボのおかげで、8日(土)の予選でロズベルグが叩きだしたタイムはインテルラゴスのコースレコードを塗り替えた。
「今、年間最多ポールをうんぬんされても、僕には何の意味もないな」と、昨日コメントしたロズベルグ。「もしかして、10年経ったら(ポール・トロフィー獲得を)振り返るかもしれないが、もっか僕の焦点は別のところに合っている」
それはきっと、先週ベッテルがパリに送り返した大きな箱の中身だ。
実際のところ、現在、最大のプレッシャーがかかっているのは恐らくハミルトンだろう。何しろ自身二度目の栄冠まであと一歩に迫っているのだ。
シーズン残り二戦でランキング首位のハミルトンとは24ポイント差のロズベルグ。ブラジルとアブダビの両方を勝ちたいところだが、ロズベルグは次のように話す。「それは違うな」
さすがはロズベルグ、確かに違う。もし彼がブラジルとアブダビで連勝しても、ハミルトンが2位に入ればタイトルを持っていかれる。
残すは、ハミルトンのマシンを襲うかもしれないトラブル頼りか。
「そんなことは話したくもない」と、予選よりも以前にブラジルで、スペイン『El Confidencial(コンフィデンシアル)』紙に語ったロズベルグ。「どうかルイスのエンジンは壊れないでほしい」
そしてロズベルグは、こんな冗談をいう。「もし壊れるなら、僕はブラジルで、彼のはアブダビにしてほしいな!」
物議をかもしているポイント二倍レースについては、どうだろう。ロズベルグがタイトルを取れるとすれば、この制度のおかげだ。
「僕が(タイトルを)取るには、何らかの不可抗力が働かなければならない。僕の手ではどうしようもないよ。とはいえ、F1では実にいろいろ起きるものだ」
「いずれにしろルイスの協力が必要だ」と、ドイツ『Bild(ビルト)』紙に話すロズベルグ。「例えば、後ろから追いかけ回して彼のミスを誘うとかね」