ドライバーに対してパフォーマンスに関する内容を無線などで伝えることを禁止するルールが新たに導入されたが、パドックには混乱が見られる。
【結果】F1第14戦シンガポールGPフリー走行2回目の順位、タイム差
当初F1を統括するFIA(国際自動車連盟)は、ドライバーとマシンの両方に関する内容を禁止していたが、チームからの反対を受けて、マシンに関する内容は認められることになった。
■何が認められるのか、ドライバーも混乱
しかし、F1シンガポールGP(21日決勝)の初日には、許可される範囲についてドライバーも混乱していたようだ。
フリー走行中にルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)はライバルのペースを無線で尋ねたが、レースエンジニアからの返事は「とにかくプログラムを続けて、そのことはガレージに戻ってから話し合おう」だった。
また、チームメートのニコ・ロズベルグも走行中に無線で「チームメートのラップタイムを僕に言うことは認められている?」と確認していた。
ほかのドライバーのセクタータイムなど詳細な比較は禁止事項に含まれるが、ラップタイムは禁止事項に入っていない。
F1競技委員長のチャーリー・ホワイティングは、暗号を使うことは禁止だが、ドライバーを励ます内容は認めるとメディアに対して説明している。例えば、ハミルトンのレースエンジニアはペースアップを指示する際に「ハマー・タイムだ」と言うが、それは認められるという。
元F1ドライバーのデビッド・クルサードは『Telegraph(テレグラフ)』に対し、「ちょっと本筋からずれているし、単にグレーゾーンを生み出しただけ。とにかく受け取り方の問題でしかないように見える」と話している。
■取り締まるのが難しいルール
次の日本GP(10月5日決勝)で審判役のスチュワードを務めることになっている元F1ドライバーのミカ・サロは、こうした無線をめぐる騒ぎについて「本当に奇妙だ」とフィンランドのテレビ局『MTV3』で語っている。
「完全な禁止か、まったく禁止しないかのどちらかにすべきだと思う」
「チームは暗号を考え出すだけだ。スチュワードが見なければならない内容がさらに増えるだろう」
「おかしなルールだと思う。取り締まるのが難しいからだ。どんな混乱に対処しなきゃならないか、次のレースで分かるだろう」と言ってサロは笑っている。
本来この規制は、今年の複雑なF1マシンを走らせているのがドライバーではなく技術屋やエンジニアのように見えるということを問題視して生まれたものだった。
ウィリアムズの最高技術責任者パット・シモンズは、ファンの声に真剣に耳を傾けるべきだと語る。
「残念ながらF1は、一般の人々にどういうところが面白いのかを尋ねない。それが本当に残念だ」というシモンズの言葉を『Telegraph(テレグラフ)』が伝えている。